アメリカ合衆国ニューヨーク州。アメリカ経済の中枢であるニューヨーク市を擁し、1000万を超える

人口を抱える連邦屈指の有力な自治体であったこの州の繁栄は、1942年8月16日を持って終焉を告げた。

 対日戦争開始と同時に襲い掛かった巨大な津波によってニューヨーク市を含む沿岸一帯は洗い流され、内陸部

にも大量の海水が押し寄せた。しかも津波は数回に渡って押し寄せ、その被害を拡大させた。


「何と言うことだ……」


 ニューヨーク州知事のトーマス・デューイは、州都オールバニの州庁舎に設置された津波対策本部で頭を抱えた。

 彼の目の前には被災地の詳細な情報が記された書類が置かれていた。そしてその内容は信じられないものだった。


「かつて繁栄を極めたニューヨーク市マンハッタン島は、津波によって完膚なきまでに破壊され、繁栄の象徴で

 あった摩天楼はなぎ倒されている。独立の折にフランスから贈られた自由の女神像は台座ごと消滅。

 そして一ヶ月経っても引く気配がない大量の海水の上には、無数のゴミと死体が浮いている。何の冗談だ、これは」


 普段であったら、間違いなく「夢で見たのか?」と馬鹿にする内容だ。しかし残念なことにそれは現実であった。


「まるで、この世の終わりだな」


 津波などと言う自然災害に見舞われたことの無い東海岸の住民の中には、この突然の津波を見て、この世の

終わりが来たと勘違いした者さえ居た。デューイは自然災害の一種と見ていたが実際の被害が明らかになるに

連れて、この世の終わりが来たと思っても不思議ではないと思うようになった。

 デューイは対策本部の情報担当者に尋ねる。


「被災地の救援作業はどうなっている?」

「州軍、州防衛軍が全力を尽くしていますが、被災地域が余りに広範囲に及んでいるので手が回りません。

 連邦軍の本格的な支援が無い場合、これ以上のことは不可能かと」

「連邦軍か……」


 この言葉に対策本部に居る人間達は渋い顔をした。何しろ連邦政府そのものが消滅したことは周知の事実だ。


「被災地では食糧医薬品の不足によって急激に衛生状態と治安が悪化しています。州警察、州軍が必死に暴徒を

 抑えていますが、すでに一部では略奪騒ぎが起きています。このままでは……」


 その先はこの場の人間の誰もが聞かなくても判っていた。


「被災していない州への応援要請は?」

「経済の混乱で、各州もそれどころではないようです。さらに各州の中には、この大災害を利用して連邦内の

 主導権を握ろうと画策する州もあるようです。シカゴに樹立予定の暫定政府に自分達の州の代理人を送り込む

 動きも見られます」

「こんな時にか。アメリカ東海岸どころか、大西洋沿岸地域が大打撃を受け、日米戦争が続いている状況でか」

「こんな時だからでしょう。この大災害を契機に、自分達の州をアメリカの中心に据えたいと思う州があるのは

 不自然なことではないかと。彼らからすれば対日戦争よりも、連邦内部の主導権争いのほうが重要なのです。

 彼らにとって日本というのはその程度の存在なのです」

「………」


 デューイは、この非常時においてあまりに身勝手な行動を取る各州の態度に怒りを覚えた。

 しかし同時に各州が血眼になって主導権争いをすることも理解できた。各州、特に内陸に位置する州にとって

日本など極東にある小さな島国(実際には東アジアに浮かぶ島国として把握しているかも怪しいが)でしかない。

 しかも日本は確かに経済成長を遂げたと言っても、開国し近代化を始めてから70年程度の新興国、それも

黄色人種の国なのだ。そんな彼らが太平洋を越えて北米大陸にまで攻め寄せてくるなど、内陸の住人達からすれば

妄想でしかない。もしも開戦直後にパールハーバーが日本軍機によって空爆され、太平洋艦隊が壊滅していれば

少しは考えを改めたかもしれないが、戦争は遥か遠くの極東で行われているものに過ぎない。

 そんな彼らにとっては、日本との争いよりも連邦内部での主導権争いのほうがよっぽど重要だった。


(日本を侮ったツケは大きいぞ。彼らは黄色人種と言って侮れる存在ではない……彼らは異質な存在だ)


 共和党の国際主義派、穏健派に属するデューイは、どこぞの田舎政治家よりもはるかに優れた国際感覚と見識を

持ち合わせていた。彼は産業革命に乗り遅れながら、僅か70年で列強に伍する国家になった日本と日本人を侮る

ような愚は犯さなかった。むしろポーランドなどの東欧諸国の白人達よりよっぽど優秀だと考えていた。


(ロングの馬鹿野郎が日本を追い詰めるような真似をしなければ、国土が無事な日本から支援を引き出せたのに)


 デューイは思わず、ワシントンで行方不明になったロング大統領と対日強硬政策を進めた民主党の政治家達を

呪った。尤もすぐに頭を振って、考えを切り換える。


(今は、被災者を如何に支援するかだ。家財道具を根こそぎ失った被災者の中には、ゴミの中から必死に使えるものを

 漁っている者もいるのだ。彼らの生活を少しでも改善するのが我々の仕事だ)


 しかし彼は知らない。すでに次の災厄が息吹き始めていたことを。

 アメリカの悪夢はまだこれからだと言う事を。









              提督たちの憂鬱  第28話







 津波によって発生した各地の被害を聞いた夢幻会メンバーは、心身を休めるために少しの休憩を取った後に

今後の戦略を練るための会合を再開した。


「目下の問題はフィリピンです。本来なら来月には本格的にフィリピンへの侵攻を開始するつもりでしたが……」


 嶋田はそう言って言葉を濁す。しかし言わないわけにもいかないので、再び口を開く。


「フィリピンへの侵攻を中止し、アジア艦隊の撃滅と海上封鎖に留めることを提案します」

「何故、いまさら侵攻を取りやめる?」


 フィリピン侵攻のために3個軍を準備させていた杉山は怪訝そうな顔で嶋田に尋ねた。

 夢幻会首脳部としては、衝号作戦の成功によってフィリピンを強引に攻める必要性が薄くなったので、対中戦を

優先して、フィリピンは封鎖するに留めていた。しかし対中戦が半ばケリがついた以上、放置する理由はない筈だった。

 ちなみに日本軍はグアムは占領したがウェーキは放置していた。何故なら開戦前にウェーキに少なくない数の米軍機

の進出が確認されたためだ。海軍はアジア艦隊を撃滅して余裕が生まれてから改めて攻略を行うことにしていた。

 第6艦隊による通商破壊は活発に行われており、少なからざる数の輸送船を海の藻屑としていたものの、津波の被害

の影響が出始めるにつれて輸送船の数そのものが激減してしまい、ウェーキ周辺は奇妙な平穏に包まれていた。


「現状ではアジア艦隊を撃滅し、主要軍港を完全に破壊してしまえば、フィリピンは無視できます。

 陸兵だけなら脅威にはなりません。残った航空機でゲリラ攻撃を仕掛けてくる可能性もありますが、イザという

 時は空母を船団護衛につけます。大鳳や祥鳳型軽空母、大鷹型軽空母、隼鷹型空母の建造は順調です。

 来月から空母は順次完成しますし、搭載する航空隊も不足はありません」

「……史実の旧軍関係者が聞いたら、涎をたらして羨ましがる補充能力だな」

「月刊正規空母と週刊護衛空母の米帝様には叶いませんよ。認めたくは無いですが衝号がなければ間違いなく

 押し潰されていました。あれだけ経済的に痛めつけても、サウスダコダ級戦艦が史実よりも早く出てくるなんて

 反則もいいところですよ。開戦が遅ければエセックス級空母も何隻かは前線に送り出されてました。

 さらにM4や新開発の重戦車が満州や上海に配置されていたかも知れません。もしそうなっていたら、ここまで

 鮮やかな勝利を得ることはできなかったでしょう」


 海軍省、外務省、情報局、総研などの分析の結果、日本と米国の戦力差は1943年以降、加速度的にひらいて

いくことは疑いようが無かった。嶋田は日米の格差を思い出して憂鬱な気分になった。


(艦載機が2000機を越える大機動部隊が出てきたら目も当てられない。さらに、それを撃滅しても二の矢を

 用意できるなんてチートだろう……誘導兵器を投入しても、米帝ご自慢のORで対抗策が出てくるだろし。

 これでP−80、B−36、それに原爆の開発までされたら、いくらチートがあっても対応できない)


 アメリカは対日戦争、そしていつか来るであろう対ドイツ戦争に向けて軍備増強に力を入れていた。

 マンハッタン計画こそまだ存在しなかったが、いずれ米国が本腰を入れて原子爆弾を開発することは確実だった。


(VT信管、原爆といった金食い虫の兵器の開発を両立させた挙句、通常兵器だって潤沢に揃えることができる

 なんてチートもいいところだ。こっちは金や資源の問題で苦労しているというのに)


 日本は史実よりも経済的に豊かになり、技術力も向上したが米国のように贅沢なことはできない。

 VT信管の開発も進められていたが、小型レーダーを組み込んだ砲弾を米国並みに量産するだけの力は、日本には

無かった。このため海軍では電探連動の射撃管制装置の開発と配備に重点が置かれた。勿論、VT信管付きの砲弾は

生産するものの、あまりにコストが掛かるので、コストダウンができるまで配備する部隊を制限する予定だった。

 76mm速射砲とVT信管を組み合わせて、戦後米軍並みの対空砲火を形成したい嶋田であったが、予算という壁

は高かった。独裁者(表向き)とはいえ、金には勝てなかったのだ。


(足らぬ足らぬは工夫が足らぬとは言うけど、金と資源が無いとどうしようもないんだ。おまけに既存の兵器だって

 維持費はただじゃないからな。もし軍縮条約脱退して超大和型戦艦や超弩級空母とか建造していたら、どうなって

 いたことか……)


 軍からはもっと予算を寄越せと文句を言われ、大蔵省からは金食い虫扱いされて嫌味を言われる日々を送った

おかげで嶋田の胃は甚大な損害を被った。現在、これに総理大臣の責務も加わっている。


(これからもっと大変になる。薬の量を増やすしかないかも知れない……はぁ安息の日はないのか)


 内心で頭を抱えつつも、嶋田は話を再開する。


「アメリカの政治、経済、軍事中枢に壊滅的打撃を与えることに成功しましたが、時間が経てば彼らは体制を

 ある程度は立て直すでしょう。それまでにどれだけ米軍に打撃を与えておけるかが勝負の分かれ目になります」

「つまりフィリピンは放置プレイして、太平洋艦隊と真珠湾軍港を潰し、アラスカに兵を進めると?」

「そうです。フィリピンに侵攻するよりも、一刻も早くアラスカに足場を築くほうが利益になります。

 あまり時間をかけているとイギリスが横槍を入れてくる可能性があります」


 『イギリスの横槍』と言う言葉に出席者たちは顔を顰めた。

 現時点でイギリスの仲介など無視するつもりであったが、あの腹黒紳士の帝国は日本の行動を影に日向に

妨害する可能性はあった。彼らは日露戦争の時に、イギリスがロシアにやった嫌がらせの数々を忘れてはいない。


「また我が軍が米本土に足場を築いたとなれば米国政府の威信は失墜します」

「連邦政府では西海岸諸州を守ることは出来ない、それをはっきりさせて米国に揺さぶりをかけると?」

「そうです。アメリカ東海岸が健在であったら、火に油を注ぐだけかも知れませんが、今は違います。

 ワシントンDC、ニューヨークなどの政財軍の中枢が一瞬で消滅して混乱している米国にとっては

 大きな衝撃になるでしょう。西海岸諸州は自分達の身を守るために再建されたばかりの連邦政府に防衛力の

 強化を求めるのは間違いありません。そうなれば東西の対立を煽ることが出来ます」

「まさかと思うが、仮想戦記でよく見られるように、アメリカを分裂させて内戦でも引き起こすつもりか?」

「そこまでうまく進むとは思ってはいません。ただ東西が足を引っ張り合えば、我々はより優位に戦えます」

「ふむ……」

「それにフィリピンを占領下に置く余裕が我が国にはありません。

 フィリピンはもともと仏印やタイからも米を輸入しなければならない国です。ここを占領した場合、彼らの

 面倒を見なければならなくなります。我が国はフィリピンの安定のために食糧放出を迫られるでしょう。

 農林省の報告では、我が国の食糧自給率は、これまでの我々の努力もあって80%前後を維持しています。

 しかし残りの20%を確保するために海外からの輸入が必要です。フィリピンを現状で占領しても負担が

 大きいだけです。これで世界的な凶作が発生したら目も当てられません」

「むぅ。確かに史実のフィリピンでも、日本陸軍は補給を絶たれたあとに飢餓地獄に陥ったからな……」


 杉山など陸軍将校は渋い顔をする。これに辻が追い討ちをかける。


「それにフィリピン経済を維持するのは、些か面倒です。正直に言ってあの国を占領しても費用に見合った

 利益は得られないでしょう。あの国の経済活動を維持するために少なからざる負担を強いられます。

 平時なら可能かも知れませんが、戦時においては無視できるものではありません。来年以降に発生する

 可能性がある凶作に対応するために食糧の備蓄も一層進めなければならないのでお荷物を抱える余裕は

 ありません」

「国力上の問題か……やむを得まい」


 そう呟いた後、杉山は他の陸軍将校に視線を送る。他の将校達は暫く逡巡した後、頷いた。


「判った。それで行こう。あとは中国戦線だが……陸軍内部では北京や南京の攻略を推す声がある」

「やはり強硬路線が幅を利かせていますか」

「そうだ。満州や上海で完勝したからな。威勢のいい連中は、ここで中華民国の首都北京を占領してしまい

 張学良に降伏を迫るべきだと考えている。張学良が焦土作戦を取って連中が奥地に逃げたらどうするんだと

 怒鳴って表向きは黙らせたが……大陸利権に目が眩んだ政治屋や企業、大陸浪人と手を組んだら厄介だ」


 これを聞いて出席者の多くが顔を顰めた。史実を知る人間にとって中華大陸というのは鬼門でしかない。


「海洋国家が大陸の奥深くに進出しても、痛い目にあうだけだというのに……」


 辻は嘆かわしい、と言わんばかりにため息をついた。


「全くだ。正直に言って、大陸奥深くでゲリラ戦にあったら目も当てられない。折角育成した貴重な士官を

 消耗したら陸軍の屋台骨が揺らぐ」


 これを聞いて嶋田は同意した。だがそれも長続きはしなかった。


「大陸で戦っている陸軍士官の中には同人作家が沢山居るんだが……連中、死んだら遺作を靖国に飾りたいと

 言っているんだ。私としては陸軍の黒歴史になるようなものをあまり表沙汰にしたくない」

「………は?」


 目が点になる嶋田。一方、伏見宮は杉山に苦言を呈した。


「いやいや、彼らの遺志を継ぐのも我らの責務ではないか?」

「……エロ同人誌を靖国に飾るつもりですか? 靖国の他の英霊が泣きますよ?」

「むむむ……だとすると、靖国にそれ専用の場所を設けるべきか。海軍にも同人作家は多いからな」


 あらぬ方向に向かう会議を見て、嶋田は頭を抱えた。嶋田としては、そんな黒歴史など焼いてしまえと思って

いたが、そんなことを言い出せる雰囲気ではない位は読めた。故に彼はこの話題をスルーした。


(エロゲーとエロ画像を目一杯詰め込んだHDDを遺して死ぬのと同レベルだな。家族が泣くぞ?

 ……まさかと思うが前線で漫画を描いているような奴がいるかも知れんな。恥を晒さなければ良いが。

 あ、でもその原因のひとつを作ったのは俺だったよな……ふふふ、50年後に何ていわれることやら)


 乾いた笑みを浮かべつつも、嶋田は会議を進める。


「とりあえず中国戦線は青島と奉天の攻略を行った後は、東シナ海沿岸地域の占領に留めましょう。

 米英による支援が無い状態で、大陸沿岸を封鎖し、奉天にある軍需工廠を押さえれば中華民国は無視しても

 構わないでしょう。我々の敵はアメリカであって、中華民国はあくまでオマケですから」


 この嶋田の意見に出席者達が頷く。しかしそんな中、田中が渋い顔で口を開く。


「申し訳ないのですが、大陸に関係する事柄で、重大な問題が先日報告されました」

「重大な問題?」

「はい。大韓帝国の反日派に満州経由で支援が行われているという話がありましたが、この反日派の支援に

 大韓帝国政府が関わっていたことが判明しました。連中、反日派の動きを黙認していたようです」

「「「は?」」」


 想像を絶する報告に出席者全員の目が点となる。さすがの辻も呆気に取られた。


「……それは本当ですか?」


 嶋田が恐る恐る尋ねた。


「何度も確認させましたが、間違いありません。さらに大韓帝国政府内部からも密告がありました」

「……連中、何を考えているんでしょうか?」

「判りません。ですが我が国の庇護下にあるにも関わらず、このような姑息な行為にでたとなれば、ある程度の

 ペナルティは必要でしょう」

「確かに……」


 出席者達はまた面倒な問題が起きたな、とばかりに顔を顰めた。


「保護国に留めてある程度は自由にやらせてやっているのに、この始末か……いっそ植民地にするか?」


 この杉山の意見に辻が即座に反対した。


「予算が勿体無いです。半島北部でウランは取れますが……現状で植民地にしてまで取りたいとは思いません。

 まぁ精々、反日派の粛清と締め付けの強化が関の山でしょう。皆殺しにするわけにもいきませんし」

「連中、何かあったらまた後ろから我が国を刺そうとするぞ。この際、心を鬼にして処理するべきでは?」

「殺しつくしても後始末が面倒ですよ。それに植民地にしたら、東南アジアの植民地を解放する際の大義が

 色あせます。英国だったら、朝鮮を植民地化した日本は白人国家と同じ帝国主義国家だと喧伝しますよ」


 辻の意見を聞いた嶋田はため息をつきながら同意する。


「まぁ暫くは辻さんの言うとおり、反日派の粛清と締め付け強化に留めましょう。あと反日派の支援に組した

 韓国政府内の要人の数名を、彼らの親族ごとこの世から退場させれば、十分な脅しにはなるでしょうし」


 嶋田らしからぬ過激な意見を聞いて杉山は驚いた。


「一族郎党皆殺しか。過激だが……やり過ぎると連中は逆恨みするぞ?」

「表向きは反日派によるテロと言う形で収めます。連中に、我が国に逆らうとどんな目に合うか、そして誰の

 おかげで自分達が権力の座に居座ることができるのかを理解させてやれば、静かになるでしょう。

 ああいった頭の中がお花畑の連中は、自分が仕出かしたことが自分に返ってくることを体で理解させれば

 勝手に怖気つきますよ」

「そこまでうまくいくか判らんぞ。連中は最悪の時期に最悪の選択をする民族だ」 

「ふむ、確かに彼らの行動はこちらの予想の斜め上を行きますからね。では軍部を完全に取り込みましょう。

 軍の統帥権を実質的にこちらで押さえ、かつ彼ら主導の政府を作れば良いでしょう。

 これでもダメなら、朝鮮半島で大花火大会をするしかありません。まぁ、かなり汚い花火になりそうですが」


 辻はすかさず嶋田の意見に同意する。


「それが一番面倒が少なくて済みますからね。まぁとりあえず、当面は内密に処理しておきましょう」


 彼らにとって重要なのは朝鮮半島が緩衝地帯として安定することであり、半島に軍国主義国家が誕生しようが

粛清の嵐が吹き荒れようが、外に迷惑をかけないのであれば何の問題もなかった。


「それにしても半島、中国と面倒な存在が隣に居ると苦労が耐えませんね」


 嶋田はため息を漏らす。これに辻が同意する。


「中国は分裂させてバラバラにして無害化、半島国家は国境を完全に封鎖して隔離したいですよ。全く」

「そのあと完全にパック詰めして誰も触れないように出来れば言うことなしですね」

「我々がパックに詰めても、破りたがる国が多いので無理でしょうね。特にソ連が……」

「まぁドイツとの殴り合いに専念せざるを得ないので、暫くはこちらに目は向けれないでしょう。連中に余力が

 あると南満州に大軍を張り付かせないといけないので、こっちとしては助かっています」


 ドイツ軍は旧ポーランド領のソ連軍を何とか突破して、ソ連本国に流れ込んだものの、それまでの戦いで

著しく消耗していたために、その進撃速度は史実ほどではなかった。

 杉山はソ連の話が出てきたのを見て、補足するように言う。


「ドイツはポーランドでの戦いで消耗しすぎた。彼らは失った戦力の補填のためにモスクワよりソ連の資源地帯の

 攻略を優先せざるを得ないだろう」

「史実のブラウ作戦の前倒しですか」

「成功するかは判らない。もし南部の資源地帯が陥落した場合はソ連は大打撃を被るだろう。よってスターリンも

 必死に抵抗するだろう。何せ、農業政策の失政、重工業化の失敗、冬戦争での敗退、それに独ソ戦での敗退と

 失態が続けば失脚だってありえる。あのグルジアのヒゲ親父の所業から考えると、失脚と同時に物理的に首が飛ぶ」

「……まさかと思いますが『ブラウ(仮称)が成功したらソ連へ侵攻する』なんて考えている人はいませんよね?」

「米中に加え、ソ連まで敵にしたい戦争狂はおらんよ。そんな連中はとっくの昔に軍から放逐した。

 それにソ連が弱ったと言っても、あの広大なシベリアに侵攻するなんて狂気の沙汰だ。史実のシベリア出兵の

 二の舞になるのがオチだ」


 この言葉に出席者達は同意した。何しろシベリアはあまりにも広すぎる。


「いずれにせよ、大まかにはこの方針でいくということで」


 かくして日本の方針は決した。








 夢幻会の決定に基づいて、海軍軍令部と連合艦隊司令部はフィリピン総攻撃に向けて準備を開始した。

 海軍軍令部では軍令部次長の伊藤中将、作戦課長の福留少将、連合艦隊参謀長の宇垣少将を中心にいかに

フィリピンを上陸することなく無害化するかで意見交換が行われていた。

 本来なら軍令部総長である嶋田も出席しなければならないのだが、三職を兼任しているのでそんな余裕がなく

細かい業務は軍令部次長である伊藤中将と夢幻会派の福留少将達に任せていた。普通は部下に舐められそうな

ものだが、大蔵省の魔王である辻から海軍予算をきちんと引き出し、必要な部署に必要な権限を十分に与えて

くれるので評判は悪くは無かった。


「扶桑と山城を第1艦隊に戻した後に、第3艦隊と共に総攻撃が望ましい」


 福留は連合艦隊の兵力を集中して、一気にアジア艦隊をもみ潰すことを提案した。だがこれに異論が唱えられる。


「アジア艦隊は戦艦4隻、空母1隻、重巡洋艦2隻、軽巡洋艦3隻、駆逐艦24隻。これに第1、第3艦隊の総力を

 もってあたるのは過剰なのでは?」

「油の無駄使いになるのではないでしょうか? 港をたたき続け、さらに主要軍港を機雷で封鎖して身動きをとれない

 ようにしておけば無視できるのでは? 補給を絶たれた艦隊など置物同然ですし」


 アジア艦隊の母港であるキャビテ軍港は連日の爆撃で殆ど使用不能になっていた。他の軍港についても順次攻撃が

行われ多大な米軍は被害を被っていた。おまけにハワイからの補給も途絶しているので、備蓄物資は減る一方だった。

さらにアジア艦隊は日本軍の猛攻から必死に逃げ隠れしていたために燃料の消費も馬鹿にならなかった。


「これ以上逃げられると面倒だ。この際、敵の3倍以上の兵力を動員して一気に包囲殲滅するほうが良いだろう。

 港を完全に潰してもアジア艦隊が逃亡して太平洋艦隊に合流したら、真珠湾攻撃作戦が面倒なことになる」

「アジア艦隊が逃亡することを考えると、潜水艦と基地航空隊も動員して、大規模な封鎖網を作る必要がありますが」

「対中戦の目処が立った今、大陸にあれだけの航空隊を張り付かせる意味は無いだろう。使える部隊を順次送り込む」


 物量を全面に押し出した総攻撃を福留は主張した。現状では奇策を弄する必要は無い、彼はそう考えていた。


「たとえ、米海軍が我がほうより遥かに劣勢だと言っても、油断してはならない。全力を持って叩き潰すべきだ」


 伊藤もこれに頷いた。駐在武官としてアメリカに赴任し、米海軍のスプルーアンス提督と深い親交を結ぶなどして

米海軍と米国について詳しく知る伊藤は、たとえ米海軍が手負いだとしても、油断できない相手であると考えていた。


「情報局及び海軍情報部の堀提督の話によれば米太平洋艦隊は、ワシントンDCを含む米東海岸が壊滅した影響で

 身動きは取れない状態だ。この機を逃さず、一気にアジア艦隊を叩き潰して、太平洋艦隊との決戦に臨むべきだ」


 ここで宇垣が意見を挟む。


「ですが、あまりに兵力差がある場合、アジア艦隊が戦うことなく逃亡を図るのではないでしょうか?」

「一戦も交えることなく?」


 福留は「それはないのでは」と反論したが、宇垣は黄金仮面の異名どおり冷静に反論した。


「また我がほうに上陸する意思がないと判明すれば、各個撃破を防ぐためとしてアジア艦隊だけでも、フィリピンから

 脱出する可能性もあると思います。脱出はしないとしても、決戦は避けたがると思います」

「ふむ。戦力の温存を図るか。確かにあり得なくは無いが……潜水艦と航空隊で封鎖すれば対応できるのでは?」

「実働部隊への負担もあります。酷使しすぎれば、後の真珠湾攻撃作戦にも影響が出るかと」


 この反論に伊藤は頷き、福留は口ごもった。福留は暫く悩んだ後、再度口を開く。


「ふむ……だとすれば、連中が出てこざるを得ない餌がいると。なら空の輸送船を用意しましょう。あと我が軍が

 本気でフィリピン攻略を狙っていると連中に誤解させるために、コレヒドールを空爆で潰すというのは?」

「要塞を空爆で潰すと?」

「もともと我が国はドイツと戦う気だったことは周知の通りですが、この対ドイツ戦争に備えて開発が進められて

 いた兵器に、地中貫通爆弾というのがあるのです。これは地中奥深くに作られた軍事施設を潰すためのものです。

 これを使ってコレヒドール要塞を潰せば、彼らは立て篭もることも不可能になるでしょう。

 そこで輸送船団と連合艦隊主力が集結したとなれば、我がほうの意図を誤解させることも出来る筈です。

 勿論、念のために、こちらがフィリピン上陸を企んでいるという情報もあらゆる方法で流します」

「それでも相手が逃げる場合は?」

「むぅ……」


 この追求に福留は黙った。伊藤も宇垣の意見を無視するわけにはいかず、どうしたものかと考える。

 暫く軍令部側で会話が続いた後、回答が出される。


「第3艦隊はフィリピンの東方に配備し、アジア艦隊が逃走した場合にこれを迎え撃つようにします。

 第3艦隊が抜ける分を補うため第1艦隊に第4航空戦隊を合流させ、さらに台湾の第12航空艦隊の支援

 の下で南下させます。アジア艦隊が決戦に応じた場合は基地航空隊と連携して迎え撃ちます。

 兵力が尚も足りないと連合艦隊が判断するなら、第11航空艦隊や第2艦隊から兵力を回します」

「第3艦隊を東に置く根拠は?」

「アジア艦隊はこれまで物資を消費し、迂回してハワイを目指すことは難しいはず。最短コースを取るなら

 直線でハワイを目指すでしょう。第3艦隊の俊足と索敵能力をもってすればアジア艦隊を補足するのは

 容易なはずです。勿論、第6艦隊の潜水艦で哨戒を厳重にします。これだけあれば撃ち漏らすことはない

 でしょう」

「……判りました。司令部にその作戦案を伝えます」


 ちなみにこの時期、連合艦隊司令部は第1艦隊旗艦長門から降りて、横須賀鎮守府の倉庫を改造した建物に

移されていた。これには海軍の伝統に反すると反発する声もあったが、対ドイツ戦争になれば地球の反対側へ

派遣した部隊の指揮も取らなくてはならない上に、軍令部、政府、さらに陸軍参謀本部との協議も必須になる

ので帝都に近く、通信施設が整った場所に司令部を移すべきだという意見に軍配が上がったためだ。

 勿論、理屈の上では正しくても感情面での反発は残った。宇垣も当初は反発を覚えた将校の一人だ。


(それにしても、海軍軍人が一度は夢見た対米戦争を、あんな建物の中から指揮しなければならないとは。

 確かに通信施設は充実しているが……全く条約派、いや宮様の派閥の人間はやることが突拍子もない。

 少しは巻き込まれる人間のことも考えて欲しいものだ。海軍軍人全員が頭が柔軟というわけではないんだ)


 宇垣は嶋田たちが主導する政策で現実的な利益を得ていたので、当初の反発は消えたが、嶋田たちが進める

海軍の改革と技術革新のせいで気苦労は増える一方だった。


(嶋田総長主導の技術革新のせいで、こちらは寝不足だ。猛勉強しないと時代についていけないとは)


 著しい技術の進歩によって、将校達が持っていた常識や知識は急速に時代遅れのものとなっていた。そして

それを放置していれば怠惰、無能のレッテルを貼られる。故に彼らは必死に勉強して時代に置いていかれない

ように努力していた。海軍も士官の再教育に力を入れていたが、その苦労は相当なものだった。


「それでは、このあたりで終わりとしましょう」


 福留の言葉を合図として会議は終了し、日本海軍はアジア艦隊撃滅のために動き出した。










 日本がさらなる攻勢のために動き出した頃、アメリカでは国家の再建に向けた動きが進められていた。

 シカゴに置かれた臨時首都では、各地から生き残った政府の人間が集められ、消滅した連邦政府がやっと

再建されようとしていた。彼らの当面の仕事はアメリカの復興、そして日本との戦争であったが、東海岸を

洗い流した津波の被害は大きく、現状で両立は困難であることは誰の目にも明らかだった。

 シカゴ市庁舎の一部を接収して作られた臨時大統領執務室では、海軍作戦部長兼合衆国艦隊司令長官に就任

したキンメル大将が急遽選ばれた新大統領に海軍の窮状を訴えた。


「作戦本部、海軍省、アナポリス、大西洋艦隊が消滅したことによって海軍の人的資源は枯渇寸前です。

 さらに東海岸にあった主要軍港、造船所も失ったために、大西洋で活動を継続することも困難になりつつ

 あります。太平洋は西海岸とハワイが使えるのが救いですが、現状では日本と戦い続けるのは困難です。

 防御に専念するにしても、補給が事欠けば押し切られる危険があります。

 対日戦争を継続するのであれば、補給状態を改善する必要があります」

「無い袖は振れないのだ。キンメル大将。我が国がどれだけ被害を受けたのか、君もわかるだろう」

「しかしこのままでは日本とは戦えません。それとも大統領は対日講和を行うおつもりですか?」


 キンメルは内心で、この新大統領の口から講和の言葉がでることを期待していた。

 何しろアメリカ海軍は瀕死の状態だ。軍政、軍令系統が壊滅し、再建に必要な人的資源も足りない。

さらに主要軍港や造船所も壊滅しているので、このまま日本と戦ったら、艦の補充すら満足に行えない。

いや現状では消耗品の補充すら満足に行えるかどうかも不明だ。この状況で日本海軍と戦うのは自殺行為だ。

 しかしキンメルの目の前に座る大統領は、彼の期待に反して首を横に振る。


「対日講和はいずれ必要だろう。しかし現状で合衆国にとって名誉ある講和が可能と思うかね?

 中国で我が軍は完敗。フィリピンは陸軍航空隊が壊滅、アジア艦隊も閉じ込められてまともに動けない。

 この状況では日本人は必ず屈辱的な条件を突きつけてくる。それを我々が呑めば市民の合衆国政府への

 信頼は失墜する。君は黄色い猿に負けたという烙印を押されたいのかね?」

「……あくまで対日戦争を継続すると?」

「無論だ。暫く海軍はハワイを拠点にして防御に専念してもらいたい。勿論、アラバマとワスプはハワイに送る」

「ですが補給が滞っている状態では、艦だけ送られても意味がありません。加えて海軍将兵の士気の低下も

 甚だしく、戦力は大幅に低下しています」

「判っている。太平洋艦隊が稼動できるように手は打つ」

「……判りました。では海軍としてはハワイを拠点にして防御に努めます。しかしアジア艦隊は」

「わかっている。アジア艦隊は速やかにハワイに撤退させてくれ。戦力は集中させなければならん。

 陸軍からは恨まれるだろうが、仕方あるまい。マッカーサー将軍には戦前の計画通り粘ってもらおう」


 この大統領の言葉に、キンメルは頷いた。しかし次に出た大統領の言葉に目を剥く。


「アジア艦隊と大西洋艦隊が合流し体制を立て直したら、すぐに日本に決戦を仕掛ける」

「決戦ですか? し、しかし現状では防御で手一杯です。オレンジプランのような遠征は不可能です。

 それにもしも日本軍が決戦を回避して戦力温存を図った場合、こちらは悪戯に消耗を重ねます。

 さらに日本海軍は我が軍の補給線を脅かすことを主眼においています。この状況で出向けば、相手の思う壺です」


 キンメルは慌てて大統領を説得しようとするが、大統領は聞く耳を持たない。
 

「我が国には長々と戦う余裕は無いのだ。何としても日本を一撃で屈服させばければならん。

 出来ればフィリピンが陥落する前に、だ。幸い要塞は健在だ。半年程度なら持ち堪えられるだろう。

 その間に可能な限り物資を蓄え、準備を整えるのだ。私も必要な手は打つ」


 そう言うと大統領はキンメルを下がらせた。

 そしてキンメルが出て行くと、すぐに別の男が執務室に入って来た。


「やれやれ、また無茶なことを言われたようですな。キンメル提督は仏頂面でしたよ」


 入ってきた途端、その男は軽口を叩く。しかし大統領はこれを咎めはしない。


「仕方ないだろう。これだけ劣勢では無茶を言うしかない。中国大陸の利権を失うことはほぼ確実な現状で

 東アジア進出の橋頭堡となるフィリピンまで失うわけにはいかないのだから。で、我らのスポンサー達は?」

「ははは。顔面蒼白でしたよ。何しろ彼らの大切な資産の多くが文字通り海の藻屑ですから。

 五大湖や西海岸周辺に工場や会社を持つ方々は、一刻も早い経済の再建を主張しています。何しろこのまま

 では合衆国経済は完全に崩壊してしまう。そうなれば連邦の崩壊を招くでしょう。下手をすれば内戦です」

「そんなことは判っている。だがこのまま日本に講和を請うわけにもいかん。あの抜け目の無い、そして強欲な

 猿たちは我が国の足元を見て金を毟り取ろうとするぞ。まして本格的に戦いもしないうちに、そんな屈辱的な

 講和を結べば、連邦政府の威信そのものが失墜する」

「確かに。ということは、日本に一撃を加えてから講和をするのが望ましいですな」

「講和ではない。条件付降伏を強いるのだよ。そのくらいしなければ、臨時政府は国民の支持を取り付けられん。

 この未曽有の国難を乗り切るには国民の団結が必要不可欠だ。まったく、私がロングの尻拭いをするはめになる

 とはな」

「あの事件が未遂に終わったのは惜しかったですな。ですが今からすれば閣下にとっては幸運だったのでは?

 何しろあのまま大統領のままでしたら、この災害で閣下は帰らぬ人となっていました。ロングが身代わりになった

 と思えばよろしいでしょう」

「ふむ、それもそうか。この国難を乗り切れば、私は建国史上最も偉大な大統領として名を刻める。それも悪くない」


 大統領はニヤリと笑って機嫌を直す。


「しかし日本軍は意外と精強のようですぞ。さらにイギリスは、日本との和平の斡旋をするつもりのようです。

 イギリスが余計な介入をすると煩いのでは?」

「風見鶏のジョンブルなど放っておけ。我々が勝てば、またこちらに擦り寄ってくる。あの老帝国はドイツとは

 まともに戦えないのだからな。個人的な意見だが、我々はイギリスではなく、ドイツと組むべきだった。

 あの若造がイギリスを押したばっかりに我々は欧州市場から締め出されることになったのだ」

「それではやはりドイツと組むと?」

「暫くは中立だ。しかし、これ以上イギリスに手を貸すつもりもない。連中に貸した金を返してもらう。

 返せないなら物納だ」

「連中が取り立てに応じますか?」

「金を返さないならドイツと組むと言ってやれ。ドイツも少なからざる損害を受けたが、主要工業地帯は

 大きな被害は無い。まぁ対ソ戦争や同盟国への支援で余裕は無いだろうが、それでもイギリスと取引する

 よりは多くの物を得られるだろう。イギリスがごちゃごちゃ言っても、最終的に日本海軍を我が軍が

 撃滅してしまえば大したことは出来んよ。だがそこに至る前に国民が根を上げては困る」

「ははは。確かに。では、世論の誘導はお任せください。ガーナー大統領閣下」


 この言葉を聞いたアメリカ合衆国大統領ジョン・N・ガーナーは笑みを浮かべる。


「頼みにしているぞ、ウィリアム」


 この大統領の言葉に、アメリカの新聞王ウィリアム・ランドルフ・ハーストは頷いた。

 かくしてアメリカは動き出す。







 あとがき

 拙作にも関わらず最後まで読んでくださり、ありがとうございました。

 提督たちの憂鬱第28話改訂版をお送りしました。

 米軍は全兵力を結集させ、日本海軍に決戦を仕掛ける方針にしました。アメリカには後が無いので(爆)。

 それでは提督たちの憂鬱第29話でお会いしましょう。