青の奇跡勝手に外伝 第4弾 アヌーク・ルコント編
宇宙軍の補給基地の一つに彼女「アヌーク・ルコント」はいた。
容姿はある程度整った顔立ちで知的な印象を受ける。
髪は短めに整えられており、目は深い青、容姿は平均よりは上であろう。
しかしプロポーションは板のように平坦である。
だがそんなことを描写する必要性はこの場合あまりないであろうので省く。
彼女は数少ない開戦時からいるモビルアーマーパイロットだ。
初陣では30機のメビウスが彼女の機体を含めて4機しか帰ってこなかった。
みんなザフト軍のモビルスーツに撃破されてしまったのだ。
もともとメビウスは対艦・対MA戦闘のために作られた機体であり、MSと戦うようには作られてはいない。
ただ戦えるというだけで対MA戦闘も考慮して作られているモビルスーツに適うわけはないのだ。
また、ナチュラルとコーディネイターという能力の壁もあった。
対MS戦闘用の戦術も考案されたりはしたが、いかんせん機体の問題がある。
その中で彼女は今まで生き延びた。
彼女は戦場では絶対にジンに近づかず、リニアガンを数発撃てば相手があきらめるまで逃げ続け
なるべく高速で敵機に接近する。要は一撃離脱というやつだ。
ちなみに、彼女の撃墜数はジン3機である。彼女はもっぱらおとりだった。
なんといっても、最初は軍人としてはかなりレベルの低いものであった。
戦う中で技術をあげていったのだが、見ていて目をそらしたくなるほど危険な機動を行うこともあった。
さすがに最近はそこまで危険なことはしなくなったが。
話がそれたので話題を戻す。
彼女の所属する部隊は250m級戦艦が1隻と130m級駆逐艦が2隻といった編成の部隊である。
モビルアーマーはメビウスが30機、彼女はその部隊の隊長である。
この日この部隊はいつもと違う任務を受けていた。
それはモビルスーツの宇宙戦闘試験部隊の護衛である。
この時期、開発されたばかりの少ないモビルスーツは、ほとんどが地上に配備されており
宇宙には月基地の一部にしかないというのが実情だった。
地球連合とはいえ、地上と宇宙に同時に大量配備は無理だったのだ。
ただ、宇宙戦をまったく経験しないのは問題であるため、試験部隊が作られた。
今日は試験部隊の実弾訓練である。
今回は敵が来る可能性が高い場所での訓練である。実戦訓練のようなものだ。
「試験部隊との合流まで、あと5分です。」
オペレーターの声が艦内に響く。それに反応して何人かが外を映し出すモニターを見た。
「あれが試験部隊・・・あの艦の中にわが軍のモビルスーツがいるのね・・・」
ルコントは正直喜んでいた。あのなかに地球連合軍の希望が詰まっているのだ。
ただ、自分が今まで乗ってきたメビウスがお払い箱になるような気がして寂しさもあった。
彼女はMAもモビルスーツと一緒に効果的に運用すればまだまだ使えるという自信があった。
そんな彼女に軍服を着た男が近づいてきた。
「コーネリアス級輸送艦だな、装甲が増設されてるみたいだが、あの程度では焼け石に水じゃないか。」
彼の名は「ジョン・オイラー」という。
四角いような顔で、彫りは深い。身長は160強のナチュラルである。
思想はブルーコスモス強行派に近く、穏健派のルコントとは仲はよいが、議論になると対立する。
「まあ、あるだけマシでしょ、もともと装甲も少ないんだし。しかし輸送艦を母艦にするなんて。。。ところで、何か用?」
「いや・・・別に用があるわけじゃないんだが・・・モビルスーツのパイロットはどんなやつが乗ってるんだろうな。」
「さあね、少なくとも、あなたみたいな強硬派じゃないわよ。ちゃんとコーディのメカニックたちとも順応してるって聞いてるし。」
「どこで聞いたんだよそんな情報。しかし2隻か、どのくらいつんでるんだろうな。」
基地からガイドビーコンが放たれる。
その進路をたどりコーネリウス級が基地にはいる。
試験部隊は前線基地に到達した。
ミーティングルームで日程等の説明があった。
とはいっても、ほとんど事前に知らされていたことを聞かされただけであった。
続いて運ばれてきたモビルスーツの映像などが映し出され紹介が行われた。
「我が部隊には30機の最新型モビルスーツが配備されてます。
こちらが、主力となるGAT−1です。性能はザフトの主力であるジンを上回ります。
さらに、量産機としては初めて小型ビーム兵器を標準装備し、火力ではザフト機を圧倒します。
そしてこれがGAT−X1・・・・・・・・・
一通り説明が終わり、士官がしめるとそのまま解散となった。
解散から数十分後、あの二人は食堂にいた。
ルコントはチューブに入ったドリンクを飲みながら、乾燥したパンを食べている。
「聞いてた?あのモビルスーツ紹介。本当なら化け物ね。一部の機体は実体弾が効果がないなんて。」
オイラーは肉料理を食べている。チューブの中身はコーヒーらしい。
「さすがに量産機に搭載することは出来なかったみたいだな。まあ電力がなくなったら効果がないようだし
量産機に付けなかったのは正解じゃないか。」
ほかの兵士も話に入ってくる。まあ8人で同じ机にいるから当然だろう。
いつもより混んでいるのにつめて座らないわけにはいかない。
いま話し掛けていたのは「ムレル・マーカ」である。
「乗るのは俺たちじゃないしその話はいいじゃん。泣いても笑っても戦闘はおきるんだし。」
「そういう問題か?明日は哨戒ついでの訓練の護衛だぞ。いつもより敵と遭遇しやすいところにいくんだし。」
話が6分くらい続いた後ルコントは席を立った。
「ごめん、そろそろ部屋に戻るわ。」
部屋に戻るとそのままその日は出なかった。
翌日、哨戒をかねた訓練に基地の部隊が出た。
編成は250m級戦艦が1隻と130m級駆逐艦が2隻、そして試験部隊のコーネリウス級2隻である。
ある程度基地から離れたいくつかの岩塊のある場所で訓練をしていた。
訓練開始から20分が経過したころ、250m級のCICの兵士が声をあげた。
「10時方向に反応あり!敵の可能性高し。すでにこちらに気づいているようです。」
艦長が慌てて叫ぶ。
「総員、第一種戦闘配置!各艦に連絡!」
「ローラシア級と特定できました!間違いなく敵です!モビルスーツの接近も確認!」
「迎撃機発進!試験部隊にも連絡して迎撃させろ。」
しかし、連絡を試験部隊も受けたが、モビルスーツ隊が訓練で燃料等をかなり消費しており、今すぐは戦えなかった。
「モビルスーツ隊は少し時間がかかる、補給を終えた機体から順次参加させる。とのことです。」
「仕方ない、アーマー対だけでも十分戦える。」
ルコント達はメビウスに飛び乗っていた。
メビウスの数は全部で20機である。予想される敵モビルスーツの数は6機。
キルレシオは3対1もしくは5対1なので同等か少し不利となる。
「発進OKです。メビウスどうぞ。」
カタパルトからメビウスが発進していく。
ルコントは部下に命令する。
彼女の息遣いがいつもより荒い。
「各機!敵モビルスーツ隊を攻撃する!いつもどうり行くから。」
「「「了解!」」」
ルコントは2機のジンを確認した。
「全機!あのジンを狙う!突入せよ!」
正面から勢いで踏み潰すという手段に出た。
メビウスが大きく加速しジンに向かっていく。中途半端な速度だと反撃にさらされる時間が長くなる。
20機すべてがジンに突撃した。もちろん突撃といっても本当にぶつかるようにに突っ込むわけではない。
2機のジンに容赦なくリニアガンやバルカン砲を叩き込む。
しかし、ジンのパイロットは驚異的な反射神経でそのほとんどをかわした。
命中したのは1発のバルカン砲が肩をかすっただけである。命中とも言わないかもしれない。
さらに避けるだけでなく、メビウスたちがすれちがい、離脱するところを突撃銃の76mm弾をおくりこむ。
片方のジンはルコントの機体を狙ってきた。
かなりの速度で遠ざかっているので銃弾との相対速度は遅くなる。突入時に撃たれるよりはかなり避けやすい。
だがそれでも正確な射撃を回避することは困難だ。
「くっ!全部避けきるだなんて、なんてやつらなの!」
彼女は2機のスラスターをたくみに操り、マシンガンの弾を避けきった。
しかし、もう1機のジンに狙われたメビウスは避け切ることが出来なかったようだ。
メインフレームに数発の弾丸が直撃し、1機のメビウスが漆黒の宇宙空間に音もなく散った。
「全機!小隊単位で散開し、あの2機を囲むように再突入!」
生き残ったメビウスは5機ずつに散開し再突入の準備を行う。
しかし、ある小隊の目の前に岩塊の影に潜んでいた他のジンが襲い掛かった。
その攻撃に2機が撃墜される。
その小隊は必死に回避したが突然の攻撃に対応できなかったのだ。
その一方で、ルコント機を主軸とした小隊が2機に再突入する。
ジンは先ほど違い回避しつつ接近するところを狙ってきた。
メビウスがまた1機撃破された。
小隊がすれちがい、ジンが追撃しようというところを別の2つの小隊がそれぞれ別の方向から突入した。
ルコントの小隊は追撃がないとみると急速反転する。
2機のジンは2方向からの攻撃と急の攻撃を回避したが、片方のジンがその隙に再突入したルコントの小隊のメビウスのリニアガンにつかまり爆発四散した。
「やっと1機撃破!各小隊もう一度密集する。」
全機がジンから離れる。
追撃を行おうとしたジンであったがメビウス以外の標的を見つけたようだ。
そう、整備を終えたモビルスーツが順次援護に向かってきたのだ。
このとき出てきた機体は13機。
ザフト側もいままで姿が見られなかった2機のジンが見えた。
4機のジン達が13機のモビルスーツに向かっていった。
ジンたちは突撃銃を発射しつつ、ある程度距離をとり、どの程度のものか様子をうかがっているようだ。
それに対し連合のモビルスーツ達もビームライフルで応射する。
一機のストライクダガーが銃弾がコックピットに直撃し撃破された。
その機体を撃破したジンは重斬刀を持ちモビルスーツ隊に突入した。
だが、そのジンを死角からメビウスが攻撃をかけた。
そのジンは直前で気付きリニアガンは避けたものの、バルカン砲の弾がスラスターカバーの隙間を抜けメインスラスターに直撃。
当たり所が悪く機動力が大幅に低下し、そこをランチャーストライクに撃破された。
さらに整備を終えた17機のモビルスーツが戦線に参加する。
しかし、この部隊に1機のモビルスーツが突入してきた。
ジンとは違う機体である。指揮官などに配備されているシグーだ。
そのシグーはガトリング砲とマシンガンで瞬く間に2機のダガーと1機のメビウスを撃破した。
さらに、重斬刀でデュエルに切りかかる。
スピードがたっぷり乗った一撃がデュエルに直撃した。
PS装甲のおかげで切れてはいないが、衝撃を防げたわけではない。
駆動系がいかれたのかそのまま宇宙空間を漂っている。
シグーは動揺したのだろうが、弱点を的確に見抜き重斬刀で間接部を切り裂いた。v
わずか数秒でデュエルの四肢を切り裂き戦闘不能に追い込んだ。
まわりの機体がそのシグーを集中的に狙いだす。
4機のGAT−Xシリーズと7機のストライクダガー、6機のメビウスの集中砲火にさらされる。
だが、それに撃破されるどころか、襲い掛かってきたメビウスを虫を払うように落とし、ストライクダガーを2機撃破する。
そして、囲まれて窮地に陥っていたジンを救出してみせた。
だがジンはすでに1機しか残っていらず、連合の機体はMS23機、MA12機も残っている。
これ以上は戦闘不能と考えたのかザフトの部隊は撤退していく。
連合側も追撃は行わず、母艦に戻っていった。
戦闘が終わり2時間ほどした後、昨日も話をした食堂にルコントはいた。
どこか哀しげな表情である。
昨日より食堂にいる人数は戦死した分少ない。
きのう話したばかりのオイラーも戦死してしまった。
「やはり・・・なれないものね。」
彼女の二日間が終わろうとしていた・・・
あとがき
今回は時間がかかりました。
実は投稿規定違反をやってしまったのです。余計な時間をとらせて申し訳ありません。
前回、美少女を出すと言いましたが・・・見事失敗いたしました。
やっぱりパイロットにしたのがいかんかったのかなぁ(自分の能力不足です)
しかも少女でもないし。
しかし、宇宙戦難しかった。
当初はメビウスだけだったんだけど、勝てそうになくて実験部隊投入。
今見ると実験部隊強すぎた。Xが全機体そろってしるし。
シグーも強すぎる人を乗せてしまった。クルーゼと渡り合えるんじゃないか。
次回はストライクダガーの生産ラインの人です。
それと、今回から私のハンドルネームを岸下からシドラードに変えますんでよろしくお願いいたします
管理人earthの感想
シドラードさん、ご投稿ありがとうございました。
前線の兵士達がきちんと書けていると思いました。戦場である以上は08MS小隊のような状況があるはずですから、こんな話を読むと
やっぱり戦争をしているな、って気がしますね。種本編にはまず無かった展開ですから(爆)
今後も頑張ってください。