昭和30年、西暦1955年8月15日。
沖縄に設置された大日本帝国の宇宙ロケット打ち上げ基地の管制室がある建物の屋上に背広姿の二人の男がいた。
「やれやれ、漸く打ち上げか……もう少し早められると思っていたが」
「仕方ありません。北米騒乱の後始末、ソビエト連邦の分裂、それにヒトラー最後の賭け……色々と面倒ごとが多すぎました」
二人はこれまで立て続けに起きた事件の数々を思い出すと遠い目をする。
「全くですよ。更に宇宙基地はパラオあたりに建設したかったのに、列強の目が厳しくなったおかげで沖縄に建設するしかなくなりましたし」
男はそう言ってため息をつく。
片方の役人風の男は苦笑して同意する。
「防諜関連の予算も含めて今の10倍以上予算を掛けられれば、パラオへの建設もありだったのですが……ね。この沖縄基地の周辺でさえ、間諜が紛れ込んでいるという話ですし」
「列強は我々が人工衛星打ち上げを名目に陰でこそこそ何か企んでいるのではないかと疑っている、と?」
「ええ。彼らの主観で言えば我々には『前科』があり過ぎるとのことですよ」
「全部こちらの仕業と思われるのは心外ですよ」
「私もですよ」
「それに、まさか大和の初陣があそこまで派手になるとは思ってもいなかった」
「大和建造の推進者の言葉とは思えませんよ、嶋田元帥」
「嫌味ですか、辻前日本銀行総裁? 全く……まさか貴方も招かれるとは」
嶋田は軍の重鎮、辻は政財界の重鎮としてこの基地に招かれていた。
「ははは、気分を害したのなら謝ります」
「全く……それにしても、ヒトラー最後の賭けの影響がこういう形で出るとは思ってもいませんでしたよ」
公的には嶋田が建造を推し進めた大和型戦艦。
実戦に投入されるまでは色々と批判されたこともあったが、大和型が、いや戦艦という艦種が使いようによっては戦局に寄与しえることをヒトラー最後の賭けと呼ばれる紛争で証明したことが、彼の先見性に対する評価と名声をより高めることとなった。
おかげで絶大な発言力があるものの、嶋田はその影響力故に行動や言動には細心の注意を払わなければならず、息苦しい時も多かった。
「まぁあれ以降、ドイツも大人しくなりました。今では英独を中心に偶発的な軍事衝突を回避するため、国際連盟に代わる組織を作る動きも活発化しています」
3年前に起きた紛争以降、世界各国は疑心暗鬼や偶発的な衝突から大規模な戦闘に発展しない様に多国間で協議して問題を解決する方針を採用していた。
そしてその交渉の場として、国際連盟に代わる新組織の立ち上げが水面下で進められていた。
「我々が知る国際連合によく似た組織ができるということですかね?」
「国際連盟と違って強国が脱退する、或いは参加しないメリットを無くすようにするなら、そうなるでしょう。例え機能不全に陥っても破綻はさせない……そのスタンスでいくなら」
「いずれ我が国に悪影響を及ぼしそうな気もしますが」
「綺麗なお題目を掲げる以上、色々と拗らせたリベラリストの巣窟になる可能性は否定できません。まぁそうならないように布石は打っておきましょう。それを活かせるかどうかは、未来の人間に任せますよ」
「やれやれ……」
「私としてはこの新組織の本部が旧アメリカ東海岸、ニューヨークあたりになりそうとの話に興味を持ちましたが」
昭和30年、壊滅したニューヨークは少しずつであるが各国の手で普及しつつあった。
それは経済都市ではなく、列強が協力してアメリカ風邪の研究を行うため、そして封鎖地域の監視を行うための拠点としての復興であったが……それは同時にアメリカ東部が誰の物でもない証左でもあった。
故に国際連盟に代わる新たな国際機関をこの中立地帯に作るのは望ましいとの意見は強かった。特に世界防疫機関が親日国であるスウェーデンにあることを快く思っていない国々の中では……。
「俗にいう歴史の修正力という奴ですか……我々の知る国際連合本部は世界一の国家となったアメリカの大都市ニューヨークに築かれ、我々の世界では誰の土地でも無くなったがゆえにニューヨーク、いや元ニューヨークに作られようとしている。歴史の神とやらは余程皮肉がお好みのようだ」
「判り切ったことじゃないですか。歴史の神とやらは血と涙、それに皮肉に満ちた展開が好みの根性悪だということは」
そんなことを言う辻を横目で見た嶋田は突っ込みたくなる衝動を必死にこらえた。
(あなたも大概だと思いますよ?)
嶋田は喉元まで来た言葉を何とか呑み込み、別の言葉を放つ。
「セカンドライフを棄てる覚悟でしたが……まさかここまで波乱万丈になるとは思いもしませんでしたよ」
嶋田は高まった己の名声も活用し、肥大化が懸念された夢幻会の分権、そして公的機関化を図っていた。
軍部と政府が連携して動くための国家安全保障会議の創設、枢密院の改革など様々な政策を進めていたが、巨大組織である夢幻会の公的機関化は一朝一夕で成し遂げられるものではない。更に日本が混乱すれば世界に悪影響を与えるので、慎重に運ばなければならない。故に嶋田は老骨に鞭打って東奔西走する日々だった。
伏見宮亡き後、実質的に彼の跡を継いだ嶋田の苦労を知る辻は無条件にこの言葉を肯定した。
「そうですね……」
彼らはそう言って沖縄の空に視線を移し、北米騒乱と呼ばれた動乱、そしてそれ以降に発生した事件を思い出していた。
提督たちの憂鬱外伝 戦後編最終話
後に北米騒乱と呼ばれる混乱はドイツ第三帝国の方針転換、そして世界防疫機関を介した大日本帝国の協力によって一定の終止符を打った。
テキサス共和国は対カリフォルニア共和国を想定して準備していた軍備で治安回復にあたり、日本側は『人道支援』の名目で少なくない量の物資、特に医薬品を提供した。
「敵に塩を送るのか?」との非難の声もあったが、嶋田はその手の意見を抑え、騒乱が起こる『少し前』に西海岸に積み上げた物資をピストン輸送することを指示した。
「事態は急を要する。あらゆる手段を用いて迅速に輸送を実施せよ」
大本営からの指示を受けた在西海岸の日本帝国陸海軍、日本政府からの協力を要請されたカリフォルニア陸軍航空隊は航続距離と積載量に優れた機体に緊急性の高い医薬品を積み込んで、次々に東の空に向かった。
貴重な物資をテキサス人に拠出する羽目になったと日本国内外で不満も多かったが、「テキサス崩壊後の混乱を考えれば安い取引だ」と言って嶋田と外務省は宥めて回った。
片や支援を受ける側のテキサス側は当初こそ「当然のこと」、「漸く劣等種が頭を下げた」などと不遜な態度を取る者もいたが、自国は勿論、彼らの宗主国であるドイツ帝国でさえ持ちえないような高速大型爆撃機の大群とそれらから多数投下される医薬品の山を目撃して口を閉ざした。
「戦争になればあれだけの爆撃機が飛んでくるという訳か」
いくらテキサス政府が威勢の良いことを言っても、実際に命を懸けて戦う軍人たちは、文官よりも冷静に彼我の戦力差を見ることができた。彼らからすれば日本軍が集結している西海岸など『悪魔の詰め所』も同然だった。
そしてテキサス政府も愚か者揃いという訳ではなく、彼我の戦力差、そしてドイツ帝国政府の強い要請を受け、カリフォルニアへの姿勢を次第に軟化させていくことになる。
北米で日独が何とか防疫線を維持しようと四苦八苦する中、北白川宮はマスメディアの前で日本政府は平和と安定を望んでいることも述べ、強硬策一辺倒ではないことを強調した。
「この数年で2億人以上の人間が死に絶え、その数倍の人間が飢餓や疫病に苦しんでいる。この有史以来例を見ない惨劇を終わらせる為、世界を再建する為、我々は各国と手を携えなければならない」
世界各地に地獄絵図を現出させた張本人たちは苦笑いが顔に出ない様に必死だったが……兎にも角にも、世界は一定の平穏を取り戻すことになる。
大日本帝国の中枢、首相官邸の執務室では、今回の顛末に関する報告を聞いた二人の男が息を吐いた。
「かくして幕は降りた、か」
嶋田は安堵した表情で書類を机に置いた。そこには強面で恐れられた独裁者の顔はなかった。
仮初の独裁者として振る舞った男の正面に置かれたソファーに腰を下ろしていた辻は、意地の悪い笑みを浮かべて口を開く。
「北米騒乱、そして第三次世界大戦はヒトラーも望んでいなかった。だからこそ、かの独裁者も手を引いたのでしょう」
「……準備が終われば第三次世界大戦、と?」
「まぁその準備が終わるのはいつの日になるかはわかりませんが」
「では我々はその日が今世紀中、いや、少なくとも四半世紀は来ない様に、彼らが『勝てる』と思わせる状態を作らない様にしなければならないか……」
辻は「然り」と頷く。
「そのためには『友人』を大事にしなければなりません。腕っぷしだけで渡っているほど、世間は甘くありません……ですが今回の一件、影響は少なくないでしょう」
環太平洋諸国会議は、外交を復活させるために開催された。
その最中に欧州枢軸勢力圏で起きた混乱、そしてテキサスの方針転換……それが文官同士の交渉の結果得られたものなら、いや多少の武力を背景にしても交渉に重点が置かれていれば、外交の重要性をよりアピールできただろう。
だが今回はそうではなかった。
「西海岸での大規模演習……果たして世間はただの演習と見るでしょうかね?」
嶋田は渋い顔をする。
そう、北米で混乱が始まったそのとき、日本軍は多数の兵力を西海岸に向かわせていた。大々的に発表したジェット機、それに対米戦で戦果を挙げた翔鶴型空母2隻を基幹とした空母機動部隊、戦艦こそ動員されていなかったが、小国なら容易に蹴散らすことが出来るだけの戦力だった。
そして西海岸諸国もタイミングよく、軍を動員していた。全ては日本側が指定した日時で行われる西海岸での大規模演習に加わるために。
動員可能な大軍と遠路はるばる持ち込まれた大量の新兵器の数々……タイミングよく西海岸に出現しつつあったソレらをただの偶然と言い張るのは無理があった。
「悲しいことに、かの紳士たちは色々と探りを入れ始めました。赤い熊も動いているでしょう。環太平洋諸国会議に参加した国々も何か思うところはあるようですし」
「疑われている、と……」
「さすがに我々が騒乱を引き起こしたとまでは考えていないようですが……我々が騒乱が起こる時期を正確に予測し、それを利用したと考えてはいるかと。まぁかといって彼らも不満は言えません。今後は多少なりとも緊張が緩和され、特に英国やカリフォルニアには余裕が生まれるのですから。ただ誇り高いジョンブルからすれば、色々と思うところではあるでしょうね」
「終わり良ければ総て良しとはいきませんね」と辻はぼやく。
そんな辻を見た嶋田は酷く懐かしいものを思い出したといった態度で口を開く。
「前の世界では『真珠湾陰謀説』等、色々な陰謀論を耳にしましたが……こちらでは本格的に我々が陰謀を仕掛けた側として囁かれる立場になったということでしょう」
この台詞を聞いた辻は豆鉄砲を食らった鳩のような表情をした後、腹を抱えて笑った。
「くくく、なるほど」
世界を相手に陰謀を仕掛け、多くの利益を分捕ってきた男は、嗤わずにはいられない。
「北米の騒乱を察知して演習を名目に兵を配置しつつ、国際会議前にデモンストレーションとして新兵器や新技術を次々に発表。列強が迂闊に動けなくした上で騒乱に際しては武力と援助、飴と鞭を巧みに使い懸案となっていた北米問題を各国首脳の面前で一気に解決する。いやはや大層な陰謀ですよ。少しでも歯車が狂ったら目も当てられない。だが我々ならそんなリスクがあってもやってのける、と……いやはや傑作だ。いや滑稽というべきでしょうか」
夢幻会が保険として打った手は悉くが機能し、最悪の事態を防ぐことができた。
だが、それはあまりに上手くはまり過ぎたのだ。これまでの夢幻会の実績を知る外部の人間たちからすれば、全てが夢幻会の予定通りと思えてしまう程に。
「そんな陰謀を遂行できる化け物だからこそ、自分たちは遅れを取った……そう自分を納得させようとするのかも知れませんよ。感情というのは中々に
厄介なものですからね」
辻は僅かに、一瞬だけ少し憂鬱そうな表情を浮かべた後に口を開く。
「何はともあれ、各国首脳の面前で快刀乱麻を断つの如く、北米を安定させる手を打ち、テキサス共和国も黙らせた……これで太平洋の秩序は確固たるものとなりました。ただ多分に帝国の武威と帝国への畏怖によって立つ秩序となってしまったのが頭の痛いところです」
外交を復活させるべく、開いた国際会議だったものの、そこで得られたのは各国の面前で帝国の力に基づく外交の有効性の再確認……本末転倒とも言える結果に終わってしまったのだ。おまけに各国諜報機関が更に夢幻会の調査に力を入れるのも目に見えている。辻と言えども愚痴の一つも零したくなる。
しかし今回の問題を早期に解決できれなければ、北米防疫線の崩壊を招き、更なる危機を招くことになるのも事実。
故に彼らが選べたのは『現在の危険を甘受して自らの理想を守る』か、『現在の危険を回避して未来に託すか』の二択。夢幻会が後者を選ぶのは当然だった。
そして夢幻会は現在の危機に対処し……最悪の事態を回避した。だが同時に多くの負債を残すことになった。
「物語なら、全て万事解決。目出度し目出度し……で終われるんでしょうが……これからも綿々と続く歴史の行く末を考えると」
「しかし、辻さん、やるしかないでしょう。それが歴史に介入し、捻じ曲げた我々の責任です」
「……文字通り死ぬまで苦労しますよ?」
「セカンドライフを棄てますか?」と目線で問いかける辻に、嶋田は軽口をたたく。
「どうせ死んだら我々は地獄送り確実ですよ。それなら多少は善行を積んで、罰を軽くする努力をしましょう」
これを聞いた辻は手を叩いて笑った。
「ははは、成るほど。閻魔相手に弁論するなら多少の実績は必要ですからね。まぁ私だったら前世の知識や人格を消し忘れたあの世側の不手際を指摘しますよ」
「そしてチート能力を貰うのではなく、罪を軽くしろと?」
「まぁそんな屁理屈が通るのなら苦労はしないのでしょう。ただ一度はやってみたいですね。いずれにせよ、我々程罪深いとなると解脱は困難でしょうが」
「……輪廻転生を繰り返し、苦行を積んで来いと?」
「下手をしたら、今の状況そのものが、前世、或いはその前の生の業によるものかも知れませんよ? そうだとしたら我々はどれだけのことをしてきたのかという話になりますが……まぁそんな思索は後にして……仕事に掛かりましょう」
北米が辛うじて安定する一方、貧困と疫病の拡大、宗教・民族対立の激化、そして現実に絶望した者たちが共産主義に走ったことによってインド亜大陸の秩序は着実に崩壊に向かった。インド洋演習によって成された一時的な抑えつけはそう長くは続かなかった。
先鋭化したヒンドゥー教原理主義者は各地で不可触賤民への暴行、略奪、殺人、放火を扇動し、イスラム教徒、シーク教徒、仏教徒などの他宗教と衝突を繰り返した。
インド国民会議はこの混乱を収めようと必死に努力したものの、その努力は大半が水泡と帰し、事態は悪化の一途をたどった。ガンジーは国民の団結を訴えたものの、その彼を厭うヒンドゥー教原理主義者によって暗殺される結果に終わった。
この上、各地で絶望した下級カーストたちは共産主義に傾倒していった。反乱分子を束ねる者たちは闘争のイデオロギーとしてマルクス主義が有効と判断し、これを積極的に利用した。かつて世界を滅亡に追いやろうとした危険思想などと言う考えは彼らの脳裏には無かった。
「敵を打倒できるなら何でもいい」
彼らはそう嘯き、解放という幻影を見せることで多くの貧民を味方につけていった。
列強では共産主義に傾倒していく印度人を「愚か」と切り捨てたが、神にも縋れない者たちに選択肢などなかったのだ。
一方、インド国外、特にパキスタンや中東諸国と連携する道が残されているイスラム教徒たちは、国外の同胞の力を借りて戦う道を選び、インドの宗教戦争は過熱するばかりとなっていた。
カースト制打倒のために活発化する共産勢力、収まるどころか周辺地域も巻き込んで拡大していく宗教対立、南北民族対立……イギリスが手を引きつつあったインドは文字通り引き裂かれていくことになる。
「インドが安定していれば、更に余力が生まれたのだが……」
後に杉山の跡を継いで陸軍参謀総長となった東条は、陸軍参謀本部でそう嘆いた。
日本はインドの不安定化を予見して手を打っていたが、それも相応の労力を必要とされるものであった。自国勢力圏の安定のために必要なことであるとだれもが理解していたが、感情面で納得できるかは別だった。
第二次世界大戦前に比べれば数の面では大幅な師団増と言えるが、それ以上に守るべき範囲が拡大していたため、陸軍は四苦八苦するようになっているのだ。この状態でインド情勢の混沌化……「余計な仕事を増やしやがって」と感じるのは当然の流れだった。
陸軍の中には師団の増設など軍拡を求める声もあったが、もともと新型戦車、新型銃の導入など金が掛かるプロジェクトは目白押し。かと言って戦時のように国を傾けかねない規模の額の予算などつくはずもない。
このため陸軍は戦後にもかかわらず、厳しい組織運営を余儀なくされることになった。
だが実際のところ、イギリスは相応の仕事をしてインドの秩序が短期間の内に完全に崩壊する事態だけは防ぐなど、一定の成果は出していた。
落ち込んだ国力でインドの完全破綻を回避しただけでも、イギリスの諜報能力の高さを物語っている。日本政府もそのことを理解しているため、感情面は兎に角、イギリスを露骨にこき下ろすような真似は控えた。
「日英でインドを封じ込めておくしかないだろう」
副総理となっていた吉田茂はそう告げ、夢幻会のバックアップの下、英国及び周辺国との協調関係維持に力を入れた。
陸軍が苦しい中、海洋国家であるが故に戦前から潤沢な予算が与えられている海軍も戦後の新秩序の中、四苦八苦する日々を送っていた。
何しろ戦後に本格的に実戦配備されるようになったジェット機を満足に運用出来るのは大鳳型空母2隻、翔鶴型2隻の合計4隻のみ。あとは戦時量産型の祥鳳型空母であり、この量産空母で運用可能なのはせいぜい20機程度。防空が関の山だった。
「これでは欧州枢軸軍を圧倒することは出来ない」
かつての無敵機動艦隊の栄光を覚えている日本海軍の軍人たちからすれば忸怩たる思いだったが、無い袖は振れなかった。
嶋田達の努力による北米の一応の安定化、カリフォルニア軍と英カリブ海艦隊の戦力が十分に『使える』と判断されたことから、日本海軍は主力艦隊を基本的には整備施設が整った日本本土近辺に待機させ、戦時になった際に現地に急行させる方針を採用することになる。
「各地の艦隊には防空用の祥鳳型を配備。基地航空隊、陸軍航空隊と共に持ち堪えてもらい、その間に主力を差し向ける」
この方針に従い、数を揃えるための戦時量産型であるがゆえに防御力に難があるとされた祥鳳型は、限界が来るまで荷馬車のように運用されることになった。
この運用が影響したのか、後に帝国が誇る巨大な電子情報網上で製作されることになる軍艦を擬人化した電子遊技において、大鳳型は深窓の令嬢、祥鳳型はフットワーク
が軽いが、やや育ちの悪い少女として描かれることになる。
しかし空母よりもある意味で悲惨なのは、戦前に主力艦としての地位を誇っていた戦艦であった。
金剛型、扶桑型、伊勢型などのワシントン軍縮条約前から存在した旧式戦艦は老朽化によって次々に退役。加えて予想以上に原潜開発や航空隊整備、核戦力整備に予算を吸い取られた影響で、長門型戦艦は2隻とも稼働させられず、長門は昭和22年には予備艦に指定。陸奥と伊吹型2隻の合計3隻で戦艦という艦種を維持することになった。
巡洋戦艦とも言える富士型2隻を合わせても、水上砲戦の基幹となる艦は戦前の半分……戦前、鉄砲屋と言われた戦艦乗りからすれば悪夢でしかない。
「大和型が完成したら長門型は即退役。伊吹型は予備艦指定だな……」
戦艦乗り達のドンとも言える古賀元帥海軍大将はそう嘆いたが、戦艦の削減という流れは変えられなかった。
もはや戦艦が主力を張れる時代は幕を閉じたのだ。
対艦ミサイルが実用化するまでの繋ぎとして、戦艦は生き残れるだろうが……それ以降はミサイル戦艦(それでも費用対効果は微妙だが)にするのが関の山であるとも古賀は悟っていた。
「レールガンでも実用化できれば話は別なのだが……俺たちが生きている間は無理だろうな」
ちなみにこのレールガンを搭載した原子力戦艦というアイデアは、夢幻会に属する戦艦乗りたちが後世に残し、21世紀に本当に検討されるという愉快な結果を残すことになる。
兎にも角にも、帝国海軍の涙ぐましい努力によって大和型の建造は続けられた。
片や戦艦を建造する余裕のない欧州枢軸は表向きは大和を張り子の虎、図体が大きいだけの的と言って「恐れるに足らず」と断じた。
「例え大型戦艦であっても航空機と潜水艦の連携があれば恐れるに足らない」
ドイツ政府高官は公式にはそう言い放った。
実際には「日本海軍が戦艦を建造したということは、相応に有効なのだろうが……それを認めてしまうと我が国も戦艦を建造しなければならない」という考えがあってのことだった。
北米の安定化によって多少は余裕が生まれた欧州枢軸であったが、世界大戦の戦禍、大西洋大津波の爪痕は深く、新大陸との航路を維持するために多数の輸送船と護衛艦が必要な状況であり、戦艦を、それも大和型戦艦に匹敵する戦艦を建造する余裕は無かったのだ。
このため彼らがひねり出したのが、日米戦争において日本が世界を驚愕させた航空戦力と潜水艦の活用だった。
「我々は日本海軍のように強くはない。ならば徹底的に弱者の戦法で戦っていくしかない」
ドイツ海軍総司令官となったカール・デーニッツは幕僚たちの前でそう断じ、海軍航空隊の整備に加え、空軍との連携も強化していった。
幸い、ドイツ空軍はゲーリングの相次ぐ失態によって権威を減じていたため、ヒトラーの意思と合わさって海軍との連携は順調に進んだ。彼らは新たな艦対艦兵器の開発にも着手し、何とか日本海軍に対抗しようと足掻き続けた。
日独英の三大国は誰もが一時的なものと判っている平和の中で血反吐を吐く思いで己の牙を研ぎ続けた。
後世において、各国がもっと話し合い、協調すればこれらの軍事力整備は不要で、予算や物資を復興に振り充てられていた。そうすれば人類の歴史はもっと明るい物となっていたと批判する者もいた。
だが彼らは知らなかった。当時の者たちでさえ、同じ思いを抱いていたことを。
そして最善の道は知っていても、その道を選べなかったことを。
血反吐を吐きながら戦備を整えていた欧州枢軸海軍と日本海軍が激突する日は、両者の予想より若干早く訪れた。
昭和27年。西暦1952年。北米騒乱から7年。スペインの植民地となっていた旧ポルトガル領東アフリカでは大規模な反乱が勃発。スペイン軍は直ちに鎮圧に動き、その過程において反乱の背後には日英が後援しているポルトガル連邦の影があると公表した。
日英は「心当たりはない」と猛烈に反論するが、スペインは欧州枢軸の盟主であるドイツ第三帝国に日英への制裁を要請する。
ドイツ第三帝国政府、特にその首班であるヒトラーは理性の面で日英と真っ向から戦うことに躊躇いを覚えたが、感情面では7年前の北米騒乱でしてやられた屈辱(ドイツ側、特にヒトラーの主観)を雪ぎたいとの思いも強かった。
「一刻も早く日本に復讐するために、スラブ人に譲歩したのだ。ここで何もしないわけにはいかぬ」
ドイツ第三帝国はソビエト連邦内での改革の方向を巡る保守派と改革派の対立を煽り、西暦1951年には改革派を放逐させた上でウラル以西を欧州枢軸勢力圏に加えることに成功した。尤も従来の方針では到底、ここまでスムーズに成功しなかっただろう。
何とヒトラーは共産主義ではなく社会主義への転向と引き換えにフルシチョフを書記長とするソビエト連邦政府の勢力圏に住むスラブ人には基本的人権を保証するなど従来では考えられない譲歩を行ったのだ。
「あれだけ反ソ連、反共義勇兵を持ち上げておいて、掌をひっくり返すのか」
ヒトラーのこの方針転換に日本のマスコミは「変節漢」と叩いたが、かつての独ソ不可侵条約を知る者たちは「対日戦争をより重視し始めた」との思いを強くした。
片やヒトラーは完全な奇襲になると思ったのだが、時の日本帝国内閣総理大臣・吉田茂はこの事態にも冷静に対応し、イギリスを巧みに巻き込んでウラル以東にはロマノフ帝室が復帰した立憲君主制の東ロシア帝国を早期に樹立させたため、満足感はあまり得られなかった。
日英、特に日本の夢幻会からすれば「ヒトラー恐るべし」と思う程、「綱渡り」と評せる各種工作を余儀なくされたのだが、ヒトラーからすれば「またしても連中に読まれていたか」との思いを強くするだけだった。
そして老いた独裁者は今回のスペイン領東アフリカの動乱を切っ掛けに国境紛争を仕掛ける方針を採用する。
「ここまで予をコケにしてくれた有色人種に、何もしないわけにはいかん」
健康面に不安を覚え、引退を考えるようになったヒトラーは、引退前に最後に一矢報いたいとの思いからこの限定戦争を承認した。
総統官邸に集まった閣僚の中には「話し合いで解決を」と提言する者も少なくなかった。
「しかし総統、本格的な戦争となれば……核戦争を決意しなくてはならないのではないでしょうか? 我が国は未だに核兵器を持っていません」
北米防疫線の維持を考えれば、日本も容易に核攻撃はしかけないだろうが、それでも不利なことには変わりないのだ。
富嶽に対抗できる迎撃機も辛うじて配備したが、欧州全土を守るような防空網の整備は完成していない。この状況で限定的にとはいえ戦いを挑むのはリスクが高すぎると穏健派は主張した。
しかしそららの意見を聞いたヒトラーは意地の悪い笑みを浮かべる。
「私も今の時点で日本と真っ向から戦うつもりはない。私が狙うのはここだ」
そういってヒトラーは壁に掛けられた巨大な世界地図、そこの中に描かれたある島嶼を指す。
「マダガスカル島の東900キロに浮かぶ英国領モーリシャス諸島。戦場はここに限定する」
「モーリシャス諸島、ですか」
「そうだ。アフリカ東岸の要衝、マダガスカルを狙える位置にあり、将来のインド洋進出のための拠点の一つとなり得る島であり、『友邦』である仏伊海軍の参戦も期待できる場所でもある」
「成るほど、友邦の参戦は誘いやすい位置にあります。しかし総統、仮に仏伊海軍が参戦しても、日本軍が本格的に動く危険があるのでは?」
「以前ほどではないが、日本の世論は英国の為に血を流すことに否定的だ。インド洋の離れ小島一つ、それも英領の小島に端を発した紛争の為に独日関係を悪化させ北米防疫線を瓦解させる愚は犯せまい。仮に派遣されてくるとしても支援のための1個艦隊程度だ」
「ですが少数でも脅威となるのではないでしょうか? 冬戦争ではそれでソ連軍は痛い目に遇いました」
「それは連中が日本軍を侮ったからだ。我々は早期にかの島嶼の要衝を抑える。英軍がどうにも出来ないとなれば日本軍も出張らざるを得ない。そこを叩くのだ」
後にヒトラー最後の賭けと呼ばれるモーリシャス事変の始まりだった。
1952年5月12日、ヒトラーは友邦であるスペインを守るため、そして英国への懲罰としてアフリカで大規模な軍事行動を開始する。
欧州枢軸軍は示威行為としてマダガスカルに兵を集め、印度洋の英国の航路をいつでも遮断する準備があると脅した。裏ではポルトガル連邦への支援停止を要求した。勿論、それは擬態であったが、イギリスは擬態だろうが本心だろうが、ドイツとの交渉に乗るつもりはなかった。
「チェンバレンの失態を繰り返すわけにはいかない」
英国の復興を進めてきた円卓はドイツに対して安易に妥協することが如何にツケを残すかを理解していたのだ。
「このあたりで国王陛下の軍隊が強いことを示さなければならない」……イギリスの軍人たちはそう言って己を奮起させた。
かくして独英は一切妥協せず、6月には戦闘状態に陥ったが、イギリス軍は対日戦争を考慮して練り上げられた欧州枢軸海軍及び空軍との戦いで手痛い打撃を受けることになった。
高速Uボートの群狼戦術、空対艦誘導兵器を搭載した空軍部隊、そしてそれらと巧みに連携する欧州枢軸水上艦隊。
これらとの戦いで空母イラストリアスと戦艦POWを撃破され、巡洋艦2隻と駆逐艦5隻を喪失することになった。加えてモーリシャス諸島にも上陸を許し、英軍は劣勢に追い込まれたのだ。
だがこれまでのように一方的に敗北する程、イギリス軍も弱くはなかった。陸海空軍がそれぞれ踏ん張り、ドイツ軍を散々に梃子摺らせた。
「ここで無様に敗北すれば、イギリス軍人は街を歩けなくなる」
先の大戦以来、全くと言ってよい程、良いところが無かったイギリス軍の政治的地位は低下していた。
円卓の支援で何とか立て直してはいるが、ここで再度大敗するようなことがあれば、軍の発言力は地に落ちる。軍人たちはそれだけは避けるべく必死に抗戦した。
かと言って欧州枢軸軍の牽制によって、他方面から容易に増援を出せない以上、彼らは決定打を持ちえなかった。
そして印度洋のシーレーンの混乱は日本が望むではなく……幾度の調停が失敗した後、日本はヒトラーの予想通り義勇軍を派遣することとなった。
この義勇艦隊の旗艦こそが戦艦大和。
日本の古き名前を艦名に頂く、世界最大にして、日本海軍が世界最強と自負する戦艦であった。
沖縄の空を見上げたまま、嶋田は言葉を紡いだ。
「大和は疾風改などの直掩機の傘の下に欧州枢軸空海軍をなぎ倒しました」
嶋田が言う様に戦艦大和、軽巡1隻、駆逐艦8隻を中心とした水上打撃部隊は、後方の空母瑞鶴から発進した戦闘機の支援の下、欧州艦隊との水上砲戦を挑んだ。
欧州枢軸空軍が空対艦誘導弾などを放とうとしたが、圧倒的な防空能力を持つ大和はそれさえ許さなかった。
直掩機を何とか突破した欧州側の攻撃隊は、テリアミサイルに相当する十式誘導噴進弾によってその数を減じ、高度演算能力を有する自動射撃管制コンピュータと組み合わされた60口径12.7cm両用砲と50口径7.6cm速射砲によって叩き落されていった。
「まぁ欧州側が発射した滑空誘導魚雷には多少驚かされましたが、大和はそれにも耐えきりました」
欧州側は切り札として駆逐艦や巡洋艦の一部に搭載していた有翼ロケット曳航型の音響追尾魚雷、彼らにとって切り札である新型の艦対艦兵器で大和を攻撃した。
日本海軍もさすがにこれは予測していなかったため、大和は左舷に4本、右舷に2本の魚雷の直撃を受けたが……それで大和が沈むことはなかった。
そして合計6発の魚雷を直撃させても、敢然と戦闘を続ける大和の姿は、欧州側の戦意を挫くのに十分だった。
「フランス海軍の新鋭装甲巡洋艦を含め、多数の艦艇を主砲で撃沈、或いは撃破した大和はそのままの勢いでモーリシャス諸島に突進。これで勝負ありでしたからね」
いくらヒトラーが怒号しても、ここまでやられてはどうすることも出来なかった。
大和を中核とした義勇艦隊を沈める為の手札を全て失った以上、彼にできたのは停戦交渉に応じることだけだった。
当時の様子を覚えている辻は意地の悪い笑みを浮かべる。
「いやはや、あのヒトラーが停戦に関する演説をした後、演説台から静かに去っていく姿は実に印象的でした」
「私は逆切れしたヒトラーが、何をするかと内心で冷や汗をかきましたよ」
実際、面子を丸潰れにされたヒトラーが本格的な世界大戦を仕掛けるのではないか……そんな懸念の声はあった。
何しろあれだけ一方的に欧州軍を蹂躙したのだ。やり返したいと思わない方がおかしい。
だがヒトラー、そして彼以後の政権は強硬路線を取ることが無くなった。
モーリシャス事変の後には多国間による国際問題解決に賛同するようになり、新たな国際機関の創設にも協力する姿勢を見せるようになった。
そして後に戦艦による最後の艦隊決戦と呼ばれる海戦後、世界は再び平穏を取り戻そうとしていた。
「恐らくヒトラー、そして彼以後の政権は我が国との戦争が採算に合わないと漸く理解したのでしょう」
辻の言葉に嶋田は頷いた。
「かの独裁国家において戦争での敗北は体制の不安定化につながりかねない。故に次に訪れるのはより陰湿な政争政略の世界、と」
「その通り。いやはや、全く悪人が蔓延る世が正されるのはいつの日になることか」
辻は嘆かわしいと顔を横に振るが、モーリシャス事変の後、辻がドイツ及びソビエト連邦の領域に色々と仕込みを指示していたこと、その過程でロシア人の技術者を多数『救出』したことを知る嶋田としては乾いた笑みしか浮かべない。
(少なくともヒトラーも、ドイツ人も、ロシア人も、あなただけには言われたくはないと思いますよ?)
嶋田がそんなことを思っていると、スピーカーから発射準備が完了したこと、そしてカウントダウンに移ることが告げられた。
「この衛星打ち上げが成功すれば、科学技術において我が国が圧倒的優位にあることを改めて証明できます」
「日本製品のブランド力向上ですか?」
「ええ。我が国への憧れを抱いてもらうには丁度いいでしょう。まぁ欧州枢軸側はますます日本を敵視するかも知れませんが」
「欧州側と和解できるのはまだ当分先のようです」
「早める方法はありますよ。我々がより豊かになれば良いのです。民衆と言うのは基本的に自分を貧しくする体制を肯定することはありません。我々はその手助けをしてやるのです」
「……衛星放送ですか」
「まぁ我々が知る歴史程上手くいくかは判りませんが、独裁国家の情報統制に風穴を開けられる可能性は十分にあります」
「それが蟻の一穴になり得ると?」
「なるかどうかは、まぁ後世の人間次第ですよ。我々だって永遠に生きれる訳ではないのです。出来るのは、後世の人間に我々が考えられる限りでベターな選択肢を残す程度ですよ」
そんなことを言い合っている内に、カウントダウンはついに10を切る。
「ついに、か」
嶋田と辻はそれぞれ姿勢を正し、その時を待つ。
『3、2、1、点火』
ロケットの後部から周囲にオレンジ色の光が放たれ、発射台周辺に煙が広がる。
そしてロケットはオレンジ色の炎を吐きながらゆっくりと上昇していく。発射時の轟音が遅れて響き、嶋田の鼓膜を揺らした。
「……」
しかし嶋田は微動だにせず、視線をロケットに向け続ける。
ロケットは緩やかな曲線を描きつつ、天空に消えていく。それを嶋田はずっと眺めていた。
「成功のようですね」
辻はそう言って拍手すると嶋田を我に返させた。そして我に返った嶋田は少し照れくさそうに言う。
「なかなかの迫力でしたよ。年甲斐もなく興奮しました。それに、あのロケットの軌跡が我々が夢見る世界に続くような気がして」
「いえいえ、良いことだと思います。どれだけ年をとっても興奮できる物、夢中になれることがあるのは良いことです。まして嶋田さんは激務に追われる日々なのです。多少の気分転換は必要ですよ」
「まぁそれはそうですが」
「嶋田さん。夢というのはいつかは覚めるモノです。しかし別の夢を見てはいけないとの決まりもない」
「辻さん?」
「そして大人だって夢を見たい。夢を見れない大人の社会を見た子供は、結局は夢もない人間になる。それでは面白くない。大人でも夢を抱ける社会を作ることが、夢を追い、世界を振り回した我々の責務だと思いませんか?」
辻の台詞を聞いた嶋田は大笑いする。
「ははは、辻さんがそんなロマンティストだとは思いもしませんでしたよ」
「いえいえ、私はいつもロマンティスト。夢追い人じゃないですか」
「ははは、お嬢様学校ですか……全く、貴方は変わりませんね」
「他人に夢を与える人間が自分の夢を持たないなんてありえないでしょう?」
「全く……」
笑い終えた嶋田は再び青空を眺める。
「我々にとって史実と言う夢はあの戦争で終わった……次は最後の瞬間まで、多くの人々にとって明るい未来を夢見るとしよう。せめてもの贖罪の為、出来るだけ多くの人間に明るい未来を齎す為に」
あとがき
提督たちの憂鬱外伝戦後編最終話をお送りしました。
夢幻会の面々にとって史実という名の夢は終わり、歴史が始まりましたが……その後の歴史を作る原動力もやっぱり夢ということでした。
過去の幻影ではなく、希望を夢見て進んでもらいます。
まぁ嶋田さんは老い先短いですが、次世代の為に色々と準備してくれるでしょう。
多少駆け足でしたが、戦後編はこれにて幕引きとさせていただきます。
駄文でしたが、長々とお付き合いして頂きありがとうございました。
別作品でまたお会いしましょう。