嗚呼、我ら地球防衛軍
『嗚呼、我ら地球防衛軍』 第1話
西暦2198年某月。日本関東地区の地下都市に置かれた地球防衛軍司令部の一室では10名ほどの
防衛軍高官、それに日本政府高官たちが集まっていてた。
「やはり、『ヤマト』建造は自力で?」
「はい。各国、特にアメリカ、中国、ロシアでは本土決戦を唱える軍部が台頭しており、こちらの
地球脱出計画には協力しそうにありません」
「困ったな……」
誰もが黙り込む。そんな中、一人の男が嘆息するように言った。
「まさか、こうなるとはな」
原作では参謀と呼ばれる男。宇宙戦艦ヤマトの行動にやたらとケチをつけ、人気もなかったキャラクターで
あった男はそう嘆息した。
ここに居る男達は全員が前世、正確には原作『宇宙戦艦ヤマト』の記憶を持つ者(以降、転生者と呼称)だった。
勿論、ここには居ない者たちもいる。彼らは各地で密かに活動していた。
彼らは西暦2192年以前から活動しており、密かにガミラスとの戦いに備えていた。尤も何故か転生者は
日本人ばかりだったので、歴史を大きく修正することはできなかった。
それでも原作知識を活かして、資源の備蓄、日本国内の地下都市や避難計画の早期の準備、戦場から落伍していた
ガミラス艦を鹵獲したりして必死に人類の底力の向上に努めていた。
しかしそれでも大勢は変わらない。人類は宇宙から駆逐され、遊星爆弾によって地下都市への逼塞を余儀なくされていた。
「というか、こんな末期戦状態で出来ることなんてねーだろ!」
「地球の科学力でガミラスに勝つなんて、ルナティックを通り越してファンタズムだろう」
「沖田艦長の活躍に期待するしかない」
「むしろ、真田さんだろう。JK」
転生者たちは挫けそうになるものの何とか己を奮い立たせる。何しろまだヤマトという希望があった。
だが、状況はそう甘くは無かった。大量の地上軍を抱える米中露などの大国はガミラスとの地球における本土決戦を
主張していたのだ。皮肉なことに転生者の動きによって人類の底力が多少なりとも上がったことが彼らをそうさせていた。
日本など一部の国は人類の種と独立を守るために地球脱出計画を提案していたのだが……このままでは本土決戦が
人類の方針となりかねない状況だった。勿論、それは日本が押す地球脱出計画、そしてヤマト建造が承認されないこと
を意味していた。
「長官は?」
「国連総長と話をしているが、所詮、国連事務総長は調整役に過ぎん。あの三ヶ国は抑制できんだろう」
転生者たちは難しい顔で考え込んだ。
参謀は苦い顔で口を開く。
「加えて地球防衛艦隊が事実上壊滅したことで、防衛軍そのものへの不信感も強くなっている。何しろ残っているのは
日本艦隊のみという状況だ」
アメリカ、ロシア、中国の宇宙艦隊はすでに壊滅している。これらの国々では宇宙軍の影響力が下がる一方で陸軍の
影響力が強まっていた。加えて大国のプライドもあり、本土決戦でガミラスに講和を強要するという政策が支持されていた。
「まぁTVの二期でも攻撃衛星なんて品物もあったからな……」
「あのあまり役に立たない衛星か」
「というか役に立ったか? ガトランティス艦隊にも歯が立たなかった気がするが」
「それどころか、ガミラスが地球に降下する必要すらないことに何故気付かないのだ?」
アメリカはロッキー山脈、ロシアはウラル山脈の地下に都市を建設して生き残っているに過ぎない。それも放射能に
よってこのままでは全滅は時間の問題だった。地下に逃げるといっても限界がある。
そしてそれはガミラスも分っていた。彼らの母星であるガミラスも死に瀕しているが、それでも人類よりは長生きする。
根負けするのは地球側だ。
「こうなっては仕方あるまい。ヤマト建造を日本単独で進めるしかない」
参謀の意見に誰もが頷いた。転生者の活躍によって日本の地下都市には原作よりも豊富な工業力、資源、エネルギーを
保有していた。それでもこの先を考えると余裕があるとは言えないのだが、ヤマトを建造するなら可能だった。
「問題は波動エンジンの始動ですが……どうやってエネルギー供給を取り付けます?」
「補助エンジンでも主砲は何とか撃てる。ヤマトを攻撃してくるだろうガミラス空母を撃沈すれば、協力してくるだろう。
技術面の餌も用意すれば食いつく」
「やれやれ……ヤマト発進まではどれだけ労力がかかることやら」
しかし参謀は弱気になる人間を叱責する。
「ここで弱気になってどうする! 我々『名無しキャラ』の意地を見せるときだぞ!」
地球防衛軍。地球圏最大の軍事力でありながらTV版2期を除いてたいした活躍をすることなく、ヤマトの引き立て役に
されてきた軍を支える男達の挑戦が始まる。
「でも、最後に良い所はヤマトが全てもっていきそうですけど」
「それを言うなよ……」
『嗚呼、我ら地球防衛軍』 第2話
転生者たちはヤマト建造に乗り出す一方で、遊星爆弾による被害を少しでも低減させるために艦隊の温存に走った。
冥王星にまで遠征させても自殺行為であり、無駄に艦隊と将兵と物資を浪費するだけと彼らは考えていた。
「あの三国が本土決戦を主張しているおかげで、艦隊を温存する口実が出来たな」
参謀は防衛軍司令部でニヤリと笑いつつそう呟いた。
米中露はさらに深い場所への地下都市建設と都市の要塞化を推し進めていた。日本が艦隊を温存し、地球近辺で
遊星爆弾の迎撃に専念させる戦略をとっても米中露は文句を言わなかった。何しろ日本艦隊が遊星爆弾を防いでくれている
間に本土決戦の準備ができるのだから。
参謀は必要な根回しをしつつ、長官にヤマト建造が潰えていないことを耳打ちした。
「どういうことだね、参謀?」
「日本はまだ公にしていない備蓄物資があるということです。加えて出資者も集まっています」
一朝一夕で資源が備蓄できるわけがないことを分っている長官は、参謀の台詞から日本や防衛軍の一部が長い間極秘裏に
準備をしていたことを悟った。
「……日本政府は、最初からこうなると考えていたと?」
「……『常に最悪の事態を想定するのが為政者としての務め』だそうです。ですがさすがに地球脱出用とは言えないので
公式には新型戦艦ということになります。ですので」
「分った。君達に協力しよう」
「ありがとうございます」
軽い足取りで去っていく参謀を見て、長官は久しぶりに気分が晴れた。
「防衛軍も、いや人類もまだまだ棄てたものではないな」
かくして長官の支持を取り付けた転生者たちは、ヤマト建造にまい進した。
尤も肝心の波動エンジンは手に入っておらず、鹵獲したガミラス艦から獲得した技術で作ったエンジンを搭載していた。
これによって従来の地球の戦闘艦よりも遥かに強大な戦闘力を擁していた。尤もそれでもガミラス艦隊には勝利できない
だろうが……。
「まぁ波動エンジンへの換装できれば何とかなる。火星の準備も怠るな」
そして防衛軍は、そして転生者たちは運命の日を迎える。
転生者たちが密談のために使っている部屋で大声が響く。
「『ねんがんのはどうえんじん』を手に入れたぞ!」
火星から帰還した古代達が提出したカプセルから波動エンジンの設計図があることを知った参謀は小躍りした。
「これで勝てる!!」
やっと反撃の時だ、参謀は燃えた。
一方的に撃ち減らされていく友軍を見続けてきた男はこのときを待ち望んでいた。同時に彼は自分達のような原作の
モブキャラがヤマト発進を支えるという状況にテンションを上げていた。
「確かに歴史では目立たないだろう! だが数十年後にはプロジ○クトXのような作品で紹介されて見せる!!」
参謀の意見に他の名無しキャラが頷く。
一部の原作では死亡確定組の人物(例:ヒペリオン艦隊司令)はさらに気合が入っていた。何しろガミラスに負けても
死亡。原作どおりでも歴史を改変しないと自分が死ぬのだからより切実だった。
「ショックカノンは他の宇宙戦闘艦にも搭載できます。早急に改装するのがいいでしょう」
「そうです。戦艦の建造は無理ですが小型艦なら建造できる余裕はあります」
「いやここは航空戦力を増強するべきだ」
だがここで文官たちは首を横に振る。
「ヤマトで冥王星基地を叩いた後は温存していたプラントで、各惑星、特に木星などの資源地帯からエネルギー資源を
得るべきだ。何しろヤマト建造には金と物資が掛かりすぎる」
「市民達の不満を多少は軽減する必要がある」
この言葉に軍人組みはムッという顔をするが、市民が暴動を起こしてはたまらない。
何しろ地下都市を建設した良いものの、市民同士の仲違いで自滅した地下都市も少なくないのだ。
「まぁ狸の皮算用をしていたも仕方ない。今はヤマト建造に全力を注ごう」
参謀の言葉によって会議は終わりを告げた。
そして後にヤマトは日本がほぼ単独で建造した、地球初の波動エンジンを搭載した戦艦として生まれることになる。
『嗚呼、我ら地球防衛軍』 第3話
「……やはり一から作ったほうが良かったのでは?」
財務官僚の突っ込みに対して、参謀は苦笑いしつつ答えた。
「それをやるとジンクス的に怖いだろう? あくまで『ヤマト』は『大和』でなければならない。
下手に弄って失敗したら目も当てられん」
「「「……確かに」」」
ヤマトは原作どおり沈没した大和を利用して建造されつつあった。
一部の人間は一から作ったほうが早いのではと思ったのだが……ここで原作をひっくり返すと後が怖いという考えが
支持された。実際、彼らが人類のために良かれと思って行動した結果が、本土決戦支持派の拡大に繋がったのだから
慎重になるのは当然だった。
「しかし沖田艦隊は温存できた。ブラックタイガーを載せれるように一部の艦を改造しておけば、かなりの戦力になる」
参謀の言葉に誰もが頷く。
一部の軍人は渋い顔だが、ガミラス艦を沈められる航空戦力は確かに必要なので反対できない。
「まぁ取りあえずは、ガミラス空母の来襲に期待するしかない。ヤマトの戦力を見れば各国も少しは意見を変えるだろう」
「ですが彼らが来襲したとなれば、温存していた艦隊で迎撃せざるを得ませんが……」
黒い制服を着た軍人の意見に誰もが頷く。
しかし参謀は問題ないと首を横に振る。
「日本艦隊は遊星爆弾の迎撃で消耗している。空母来襲前にドック入りさせれば良い。ただ万が一に備えてブラックタイガー
の直掩機も周辺の基地に用意しておく。ガミラスが史実以上の部隊で来てもある程度は戦えるはずだ」
そしてガミラスの高速空母は予定通り出現することになる。
慌てる防衛軍司令部の中で、参謀は落ち着いて部下達に迎撃を命じる。幸い、ブラックタイガーの配備が間に合っていた
ためにヤマトの被害は軽減できている。血気盛んなパイロットの中には高速空母に攻撃さえかける始末だ。
「さすが参謀。ガミラス空母の来襲を見越して手を打っていたのか」
「ああ。さすが、日本政府や防衛軍長官の信任が厚いだけのことはある」
防衛軍のスタッフがそんな尊敬の目で見ていることなど知らず、参謀は一人突っ込みを入れた。
「……毎回思うんだが、あの円盤型空母はどうやって艦載機を収容するんだろうな?」
「さぁ?」
司令部でそんなやり取りがされている中、ヤマトは無事(?)に補助エンジンを稼動させて出撃した。
「ふむ、これでこそ、ヤマトだな」
遺跡と言っても良い大和の外壁を崩して出撃していく様は、原作を知る人間にとってみれば何とも感慨深いものであった。
それも自分があの戦艦を建造したと思うと尚更だ。
「さてあとは波動エンジンの稼動だな」
ヤマトが持ち前のショックカノン砲9門で、ガミラスの高速空母を撃沈したのを見て参謀は次の手を考える。
波動エンジンの作動にはかなりのエネルギーが必要だった。日本単独でエネルギーを賄うとなると、今後地下都市の維持に支障が
出てしまう。よって少しでも他の国の支援が欲しい。
まぁ仮に日本単独でやったとしても、残っている日本艦隊で資源を回収できればエネルギー事情も少しは改善するが、それでも
負担は少ないほうが良い。
「外務省や首相官邸、長官と国連総長に頼んで動いてもらうしかないな」
日本はヤマトの戦闘映像を国連総会に提出する。
すると、その高い戦闘力を見て波動エンジン搭載型戦艦の量産で戦局の挽回を図るべきだと主張する国が出始めた。アメリカなどは
保管していたアイオワ級を改造して戦艦に改造する案を提出する始末だ。
だが波動エンジンを作るためのコスモナイトなど希少資源が少ないので、その計画は没となった。
「イスカンダル星にコスモクリーナDを取りに行かせるのが人類生存につながります!」
日本大使は議場でそう主張した。実際、ヤマトはイスカンダルにまで長距離航海が可能な戦艦であった。
だが無謀な航海をしてガミラスに対抗可能な戦艦を無為にすり減らすことを危惧する声もある。この紆余曲折の末、3つの方針が決定された。
@ヤマトはイスカンダルへ向かい、コスモクリーナDを受領して帰還する。
A@の過程で冥王星基地を破壊する。これによって地球本土の安全を確保する。
BA終了後、日本艦隊によってガミラス残存戦力を掃討。太陽系の安全を確保した後に資源の採掘を再開する。
採掘した資源によって地下都市の生活環境を改善。同時に工業の復活と防衛軍艦隊の再建を進める。
かくしてヤマトは世界中からエネルギーの供給を受けて旅たつことになる。
勿論、各方面を宥め、脅し、賺し、騙してエネルギーを掻き集めたのは参謀達、転生者だったのだが……地味な仕事ゆえに
脚光を浴びることはなかった。
「所詮、裏方の仕事なのさ」
そう言ってふて腐れるものの、彼の仕事は確かに評価されていた。主にお偉方から。
「彼を戦場で死なせてはならない。防衛軍再建には彼の手腕が必要だ」
こうして参謀はさらに後方で勤務することが決定される。
彼が脚光を浴びる日がいつになるのか……それは誰にも判らなかった。
『嗚呼、我ら地球防衛軍』 第4話
世界各地からエネルギー供給を受けてヤマトが発進した後、地球防衛軍は残された日本艦隊の補修と改装を急いだ。
ヤマトが冥王星基地を破壊できたとしても、ガミラスの残存艦隊が跳梁跋扈する可能性は高い。これを排除するためには
艦隊戦力の強化が必要だった。
残された希少資源で小型波動エンジンを生産し取り付けていった。出力が低いエンジンのため、エネルギー事情が悪化した
日本でも生産と稼動は可能だった。
「本当は各国にも手伝って欲しかったんだがな」
参謀がぼやくものの、どうしようもなかった。
何しろ多くの国は本土決戦のために宇宙船の建造よりも地下都市の要塞化と地上軍強化に力を注いでいた。おかげで貴重な
資源もエネルギーも浪費されており、宇宙艦隊を再建する余裕など無かった。
まして三大国はヤマトが冥王星基地を突破できるか懐疑的な見方をしており、本土決戦に向けた準備を怠ることはなかった。
「波動エンジン、ショックカノン砲の技術など少なくない技術を分け与えてよかったんですか?」
通産省の官僚は不満そうな顔をするが、参謀達軍人は仕方ないと首を横に振る。
「仕方ないだろう。日本単独であの大型波動エンジンを起動させるのは難しかったんだ」
「地球全体の防衛力強化のためには、ある程度の技術の提供は必要だろう。我々が何から何まで独占すればいらぬ嫉妬を
買って自滅するだけだ」
「国益の追求は必要だが、今は星間戦争中なんだ。必要以上にいがみ合っていては勝てる戦いも落す」
地球防衛艦隊で残っているのは日本艦隊のみであり、人的資源も一番残されているのは日本だった。おかげで防衛軍で主導権を
握っているのは日本だった。
しかしこれが米中露にとっては気に喰わないのか、色々と不満が多い。ちなみに、やたらと日本にケチをつけるはずの某半島国家は
手抜き工事のためか、地下都市が遊星爆弾で破壊されて壊滅している。今は中国の地下都市に亡命政府があるだけだ。
「まぁ今は防衛艦隊再建を急ぐのが正解だろう」
参謀の意見によって密談は終る。
ヤマトが紆余曲折の末、冥王星基地を破壊すると地球各国では喝采が挙がった。
ガミラスの太陽系前線基地である冥王星基地の壊滅は、これまで負けっぱなしであった人類を勇気付けるものであった。
「今こそ絶好の好機だ!」
参謀は防衛軍長官に直訴して、改装が終わった艦隊で資源輸送を行う事を提案する。
後に『特急便』と言われるプランであった。また彼はこの作戦を指揮する人物として土方に目をつけていた。
原作において艦隊決戦で唯一といってよい白星を得た男を、参謀は高く評価していたのだ。
「私より適任がいるだろうに。それに今、この学校を離れるわけにはいかんよ」
宇宙戦士訓練学校の校長室でそう言う土方に、参謀は尚も言い募る。
「古代君はまだ若い。彼らを纏める人物が必要なのです。それに閣下なら、航空戦力を十分に活用できる、そう信じています」
「航空戦力か」
「はい。残念ながら、地球では満足に戦艦を建造するのはまだ難しい。ですので、『えいゆう』など大型艦を改造してブラックタイガーを
載せれるようにしています。これがあればガミラス艦を早期に発見でき、対応できるでしょう。
勿論、出撃に際しては土方校長の要望を最大限尊重します」
「……分った。いいだろう」
参謀の熱意に折れたのか、土方は艦隊司令官を引き受けた。
参謀が軽やかな足取りで出て行くのを見て、土方は微笑む。
「あれが長官の懐刀と言われる男か。噂に違わぬ男だ」
このとき、参謀は有名人になっていた(名無しキャラなのに)。
何しろ本土決戦を主張する国々に従う振りをしつつ、裏ではヤマト計画を密かに根回しして進め、さらに日本が備蓄していた物資や
エネルギーを提供させた。
それに加え、資源の輸送計画を入念に策定。さらに航空戦力の有用性を見抜き、それを活用する準備も進めるなど軍政家としての
才覚があると土方が判断してもおかしくなかった。
実際、他国でも参謀の評価は高い。だがそれゆえに彼はますます前線に出るチャンスが減ろうとしていた。
彼は目立とうとして頑張っているのに、裏方としての能力ばかりが評価されていたのだ。
「これでヤマトが帰ってくれば、防衛艦隊は早期に再建できる。うまくすれば、私も艦隊司令官になれる!」
軽い足取りで皮算用をする参謀。
彼の野望が叶えられるかは神のみぞ知る。
かくして小型で低出力とは言え、波動エンジンやブラックタイガーを搭載した日本艦隊はガミラス残存艦隊の妨害を撥ね退けつつ
各惑星や小惑星帯から資源を採掘し、必死に地球に資源を輸送する。
「エネルギー事情を改善すれば地下都市の衛生状態も良くなる!」
参謀や転生者たちはそう発破をかけた。勿論、新たに得たエネルギーを市民生活の向上のみに当てるつもりはなかったが
それでも何らかの餌は必要だった。
また防衛軍首脳部は強化された防衛軍艦隊とガミラス艦隊が互角に戦う様子を流して、必死に市民を鼓舞した。
「人類はまだ戦える!」
「故に市民の協力が必要なのです!」
「欲しがりません。勝つまでは!!」
防衛軍が戦える様を見て、絶望の淵にあった市民も多少は希望を取り戻した。
また若干ながらも生活環境が改善されたことも、士気を上げた。
「負けるものか!!」
「ヤマトが帰ってくるまでは持ち堪えるぞ!!」
特に我慢強い日本人達は一致団結した。おかげで日本にある地下都市の治安は大幅に改善することになった。
残った市民はお互いに助け合い、生活を守った。また宇宙戦士への志願者も増えていった。
少しずつであるが好転しつつある状況に誰もが未来を信じられるようになっていったのだ。
「暴動も減っている。食糧事情も好転している。ふむふむ、これなら何とかなる」
自宅で朝食を取りながら、新聞を読んでいた参謀は非常に満足げだった。
また米中露、それに欧州も宇宙艦隊再建に乗り出していた。勿論、駆逐艦や護衛艦が中心であるものの戦力が回復するのは
好ましかった。
「あとは頼むぞ、ヤマト。地球は……我々が守っておくからな」
こうして地球は参謀達の努力もあり、原作よりは多少はマシな状況でヤマトの帰還を迎えることになる。